ギターケースの少女
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まどかと少女。彼女たちはその問答をしばらく続けたのち、少女のほうが先に折れた。
「えっと……じゃあ、お言葉に甘えて……」
「これくだしゃい!」
横入りしてきた、年少くらいの女の子。
彼女が、その小さな手に握った五百円玉を店員へ掲げている。
まだ若い店員は、苦笑いをしながらまどかと少女の顔を伺っている。鉄面皮で頷く二人を見て、女の子へアイスを渡した。無論、それが最後の一個だということは変わらない。
「……あ」
「あ……」
まどかと少女が、同じような顔で立ち去る少女を見送る。
二人とも、ポカンと顔を上げていた。
それを横から見ていたハルトは、思わず腹がよじれそうになった。
少女は、疲れたようにベンチに腰を落とす。
「ああ……残念」
少女は、背中を逸らせながら、公園を見渡していた。
見滝原の郊外と都心部をつなぐこの緑の公園は、大きな噴水がシンボルとなっていた。子供たちやその親が走り回り、ベンチにはカップルや家族連れが平日からくつろいでいる。
そんな中、少女の前に、まどかが言った。
「あの……ごめんなさい」
まどかが礼儀正しくペコリと謝罪した。だが少女は手を振りながら、
「ああ、いいよいいよ。限定って言っても、そんな永遠に次がないわけじゃないし。私、今ちょうどこの町にいようとしているから、問題ないよ」
「そ、そう? その……ごめんなさい」
「だから、謝らなくてもいいよ」
少女はにっこりと笑った。
だが、しばらく顎に手を当てて、
「うーん……でも、どうしてもっていうなら、ちょっとだけ頼みを聞いてくれない?」
「何ですか?」
「私、人を探しているんだけど。手がかりもなくてアテもなくて。……結局またおなか空いた……」
少女はそのまま横になる。目を一文字にして、
「ねえ、お願い……何か、食べさせて……」
チョコミント争奪戦どころではない空腹の様子の少女は、ベンチで横になった。
まどかが戸惑っているところ、ハルトが話に割り込む。
「あ、それならいいこと教えてあげるよ。お金がなくても、食べ物なんて色々なところから手に入るよ?」
「え?」
少女が強く食いついた。
「どこでですか? 食べ物って、タダで手に入るの?」
少女は立ち上がる。顔をぐいっとハルトに近づけるせいで、彼女の吐息が顔に当たって少しむずがゆい。
ハルトは顔を背け、
「手に入るよ。例えば」
近くの茂みに近づく。
即座に目当てのものを発見。ハルトはにやりと口元を歪める。
「こんなやつとか!」
さっと手を伸ばして捕まえたそれは、
「トカゲええええええええええ?」
まどかがそんな悲鳴を上げた
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