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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
疾走編
第二十八話 余波
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ネセンに帰るかどうか迷った。ヤンさんやキャゼルヌさん、エリカやマイクにも会いたいし、たまには親にも顔見せないと文句言われそうだ。
でもなあ、往復で移動に四十日、休暇は二週間、二ヶ月近く艦隊から離れるのは正直気持ち悪い。オットーやカヴァッリ大尉の引っ越しの手伝いでもしてた方がよほど有意義だ。エリカ、ごめんな…。
「ウィンチェスター大尉、FTL(超光速通信)が入っています。相手の方はキャゼルヌ大佐と名乗っておられます」
「了解した、自室で受ける」

 “よう、元気そうだな。中々の活躍ぶりじゃないか”

「お久しぶりですキャゼルヌ大佐。大佐になられたんですね、おめでとうございます。お元気ですか?活躍も何も、言われた事をこなしているだけですよ」

“こなしているだけ、か。それが出来る奴は優秀なんだ、という事はやはりお前さんは優秀な人間だ。…そんな事はどうでもいい、そのこなしているだけ、の事でハイネセンは大揺れに揺れてるぞ。…秘匿装置は入れているか?”

「…オンにしました。何かあったんですか?」

“お前さんの所のビュコック提督が昇進して第五艦隊司令官になるのは知っているな?ああ、昇進おめでとう”

「ありがとうございます。知っていますよ。オットーも昇進して提督と共に第五艦隊に行きます。それが何か?」

“お前さん達と同日付で第八艦隊のシトレ中将が大将に昇進、宇宙艦隊司令長官代理に任命される。第一艦隊のロボス中将も大将に昇進だ。ロボス中将の後任はクブルスリー少将、少将も同日付で昇進、中将、艦隊司令官だ”

「そうなんですか。でも何故そこに私が関わって来るんです?」

“麻薬密売の件だ。統合作戦本部長と宇宙艦隊司令長官が辞任する。表向きは勇退だ。同時に辞めるとなると色々勘繰られるから、先に宇宙艦隊司令長官が病気療養を経て勇退される”

「本当ですか!?」

“だから秘匿回線に切り替えたんだ。軍が麻薬密売に関わっているかはまだ分からんが、利用されたのは確かだ。下手すると後方勤務本部長もクビが飛ぶ。国防委員会も他人事ではいられない”

「何故です?」

“売り買いが麻薬だけじゃない事も考えられるからな”

「…情報、という事ですか」

“そうだ”

「でしたら、再度聴取しましょうか?まだ彼等はエル・ファシルで移送準備中です」

“だが既に憲兵隊に引き渡したのだろう?お前さんがどういう権限で再度聴取するんだ?”

「…確かに仰る通りです」

”この件はすぐには公表されない、お前さんももう関わらない方がいい。ビュコック提督やお前さん達の昇進も帝国艦隊を撃破し、帝国艦隊司令官を降伏させたから、というのが表向きの理由だからな“

「公表されない…何故ですか?サイオキシン麻薬ですよ?」


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