第三部
新たなり
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6月の末。
夏期龍帝祭の一回戦。
彼は大会に全てを賭けていた。
戦ったのは実戦訓練の授業で叩きのめした相手だが予選を見る限り別人のよう。
髪も黒から白になっていた。
再戦は瞬く間に終わる。
僅か12秒。
顔面への一発で幕を下ろす。
目が覚めたのは医務室。
「お兄ちゃんッ!」
勢い良くドアが開く。
駆け込んできたのは妹。
その声には焦りが混ざる。
強烈な悪寒に少年は察した。
「ちょっと失礼」
そこにもう一つの声。
見ると一人の青年。
「君のお母さんは無事だ。安心してくれ。俺は君に話が有って来たんだよ。《佐々木青獅/ささきあおし》君」
青年の言葉に青獅が驚く。
彼が有名人だったから。
「《矢田狂伯》……さん?」
【刻名館学園】の4年生で生徒会長。
元・龍帝学園の生徒でもあり世界的な実力を持つ【魔術師】が何の用だろうか。
中学卒業を前にしてやっと【魔晄】が宿って魔術師となり、3年間ずっとパシりをさせられていたような青獅に。
「君の力を貸してくれ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
母の病室に集まった青獅・青獅の妹・狂伯の3人は眠っている青獅の母を見ている。
「狂伯さん……の条件を、飲みます」
妹は悲しい顔をしているが狂伯は意地の悪い顔で不気味に笑った。
「よし、これで交渉成立だ。お母さんの治療に掛かるお金は全て此方で持つし、行きたい病院が有るなら移してあげるよ」
青獅が狂伯に課せられた条件とは試合で負けても良いから強くなることだ。
師匠は用意してあるらしい。
かなり問題の有る育て方らしいが乗り越えれば間違い無く強くなれるとのことなので不安ながら任せることにした。
場所を移した狂伯と青獅に会った師匠となる人物は青獅のことを評価する。
「闘才は皆無。が、得難きもん持っちょる」
師になったのは老人男性。
腰は曲がらず背筋は真っ直ぐ。
頭は完全に禿頭。
顎には立派な髭。
まるで仙人のような風貌。
「儂の名は《流永/りゅうえい》。またの名を二十六代目《九月院瞬崩/くげついんしゅんほう》と言う。儂がお前を今よりも強うしたるから着いてこい」
「妹さんの生活費も必要なだけ出すし、安心して行ってくれたら良い。気になるなら様子を見に来ても構わないから」
狂伯は青獅の背中を押す。
「手続き、はどうすれば……」
「こっちでやっとくよ。佐々木君は龍帝から刻名館に移って
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