第26節「安らぎ守る為に孤独選ぶより」
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中を、ツェルトはただ見つめるしかなかった。
彼女を止めるだけの意見が、彼にはなかったのだ。
だが、確信だけはあった。
(助けられるはずだったセレナの命を、ゴミクズのように見捨てた連中だぞ……? 目先の利益しか目にない、消費主義の権化だぞ? どうせどんな条件を取り付けようが、マムは確実に始末される……。パスワードなんか解析にかければいい、懸けた時間に見合ったものが入っている……そんなゲスい台詞と共に引き金に手をかける姿が目に浮かぶぜ、クソッ!)
ツェルトは自室へと走る。
ナスターシャ教授を止めることは出来なかったが、それでもツェルトは諦めていなかった。
何としてでも、ナスターシャ教授を。そして随伴するであろうマリアを守らなくては。
ツェルトは、自室に置いてあるRN式の入ったアタッシュケースに、こっそりと拝借してきたとある資料を忍ばせ、エアキャリアを飛び出した。
全ては、己が信じた正義の為に。
この瞬間、ずっと押し込め続けてきた自分自身の良心に従って、ツェルトは行動を起こすと決めたのだ。
ff
『お、お前は──ジョセフ・ツェルトコーン・ルクスッ!?』
「事態は一刻を争う。もう、あまり時間はない。だから、今説明できることだけ、簡潔に話す」
そう言ってツェルトは、話を切り出した。
「月の落下の真実を知っているのは、米国政府を始めとした一部特権階級の連中だって話は、この前ドクターがしていたな」
『ああ。こちらでも、つい今しがた、NASAが発表した月軌道との僅かな差異を確認したところだ』
「そのお偉いさん達が、その極大災厄に対抗して運用しようとしていた超巨大遺跡。それがコードネーム・フロンティアだ」
『フロンティア、だと……!?』
「そういえば、ウェル博士もフロンティアがどうとか言ってたような……」
ツェルトは翔と共に、タワーの階下へと駆け下りながら説明する。
目指すは58階。タワー内で一番、取引に向いている場所だ。
「フロンティアについての詳細は、今は省く。こいつに資料を預けておくから、そいつに目を通してくれ。ともかく、そのフロンティアを横から掻っ攫い、救える人間の母数を可能な限り増やすことを試みる……それがマム、ナスターシャ教授の『フロンティア計画』の概要だ」
『それで、君はどうして我々に助けを求めているんだ?』
「俺達は昨夜、フロンティアの封印解除を試みたんだが、失敗。更に、度重なる精神的な負担から、マリア達のメンタルがそろそろ限界でな……。負い目を感じたマムは今日、ここで米国政府と交渉するつもりなんだッ!」
「正気かッ!? 米国政府のやり方が気に食わなくて、お前らは自分達の国に反旗を翻したんだろ!?」
翔の困惑に、ツェルトは頷く。
「それが、最も無駄な
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