第26節「安らぎ守る為に孤独選ぶより」
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「だって、もしも恐怖に負けて逃げ出してしまったら、手を伸ばせたはずの誰かに手が届かなくなってしまうかもしれないだろ? 逃げて振り返った時、大切な人が遠くへ行ってしまうなんて、俺は絶対嫌だ。……そうだ、俺は繋いだこの手が離れてしまうのが怖いから、戦ってきたんだ……」
翔は自分の胸、傷跡がある場所に手を置きながら、再び響の方を見た。
「響はどうなんだ? どうしてガングニールを纏い、戦場に立っている?」
「わたしは……」
響もまた、自分の胸に手を当てて考える。
「……わたしは、この力で困ってる人達を助けたい。あの時、奏さんに助けられたこの命で、誰かに手を伸ばしたい」
そこまで言ったところで、ここ数日の間に何度も思い出した言葉が浮かび、響は目を伏せる。
「でも……戦えないわたしって、誰からも必要とされないわたしなのかなって……。わたしが頑張っても、誰かを傷つけて、悲しませることしかできないのかなって……」
「響」
肩を抱き寄せられ、響は顔を上げる。
見上げた翔の顔は、水槽からの青い光に照らされ、なんだか少しだけ色っぽい。
「寂しい事言うなよ。戦えなくたって、俺には響が必要なんだ。響の優しさに、温かさに救われて、俺はここに立ってるんだ」
「翔くん……」
「だから、忘れないでくれ。胸のガングニールが無くたって、君の優しさは誰かの生きる理由になっていることを。いつだって君が、誰かに愛されてることを」
「ん……」
胸に刺さっていたトゲが、抜けたような気がした。
翔の肩に身を寄せて、響は実感する。
(一人じゃない。いつの日も、どこまでも、わたしの隣に居てくれた人達がいる。お母さんやおばあちゃん。それから──未来。わたしの陽だまり。そうだ……わたし、あの時から、いろんな人達に支えられてきたんだ……)
あの日、翔に言われた言葉を、改めて思い返す。
『もっと周りを頼れ!必要以上に堪えるな!』
(わたしを支えてくれた人達に感謝する為にも……わたしは、精一杯生きていかなくちゃ)
響は翔の顔を見上げながら……。
「翔くん」
「ん?」
「ありが──ふええぇぇあああぁぁ……ッ!?」
「おおおおおっとぉぉ!?」
頬に伝わる冷たい感触に、二人は思わず悲鳴を上げて飛び退いた。
周囲の客の視線が、一斉に二人の方へと集中する。
「大きな声を出さないで」
二人が振り返ると、そこには缶ジュースを持った未来と恭一郎が立っていた。
「だだだ、だって、いきなりこんな事されたら、誰だって声が出ちゃうってッ!」
「恭一郎、小日向、お前らなぁ……」
「すまない。でも、悪いのは小日向さんを不機嫌にさせた君達の方だからね」
翔にジュースの缶を渡し、恭一郎は微笑みながらそう言
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