第二部まつりごとの季節
第二十二話 旧友、二人 (上)
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さらに性質の悪い」
「――まぁいい。実際、俺は五将家の政争に気を配る余裕は無かった。
お前が上手く〈帝国〉貴族を引っ捕えて来るかどうかの方が切実な問題だったよ。
思い出すだけで胃が痛む。」
そう言いながら豊久は眉を顰めた。
「それもそうだな。」
新城の唇にも苦笑が浮かぶ。
「実際、俺はまだ政治には関われないよ。当て推量して多少準備をしたら後は御祖父上達に任せるのが精一杯だ」
僅かに口惜しそうに呟く姿に新城は評価を修正した。
――意外と出世欲があるのだな。
「まったく、こんな目にあうんだったら警官にでもなればよかった。いまごろ州視警本部あたりで新聞片手に文句を云ってたろうに」
目に浮かんだ奇妙に馴染んだ光景に新城も笑った。
「だが将家の嫡子の立場が許さない、か。
せめて豊長様の後継者として憲兵にでもなればよかっただろうがな
話は来たのだろう?」
「まぁ、ね。 誘いにのっとけば、とも今では思わないでもないよ。
死にかけて中佐になるくらいなら憲兵尉官になるのも悪くなかったかもしれない」
昇進が遅いことや、将家仲間で受けが悪いことがあることもあり、豊久は砲兵の道を歩んだのであった。
「それはそれで面倒事にまきこまれてそうだがな」
「夢くらい見させてくれよ」
「夢か、それだったら奇特にも許嫁だっているのだし身を固めたらどうだ?
話を聞いてる限りはお前にはもったいないくらいだ」
そういいながら新城は凶相を歪める。
――まぁこいつでは無理だろうが。
「勘弁してくれ。今朝も父上に同じ事を言われたんだ」
――こうして当の本人は苦笑を浮かべて鰻の如く逃げ回っている。馬堂家は二代続いて婚姻が早かったので周囲も急かしているが――
「ほら、もういい時間だ。これ以上辺里達を待たせるのも良くないな。家の料理人は凝り性だし冷めたら――」
刻時計を懐から取り出したし、で昼飯の事を語りながら新城に部屋を出るように促す豊久に生暖かい視線を投げかけながら、新城は結論付ける。
――結局、逃げるんだな
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