第二部まつりごとの季節
第二十二話 旧友、二人 (上)
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山戯ている。
「笑わせるな、毎度の如く、貴様が何か企んでいた事は分かる」
その言葉に豊久は苦笑を浮かべ
「毎度の如くって何だよ、人聞きの悪い事を。――今言った事は全て事実だ」
そして、それは意地の悪い笑みへと変わった。
――開念寺の意趣返しか。
内心、舌打ちをする。
「中途半端な事実は沢山だ。俘虜生活で〈帝国〉を相手にしているのと一緒にするな」
――そう、嘘を言わずに他人を誘導する技能は俺よりも高いだろう。この男は生粋の政治屋である祖父に鍛えられ、そうした手管を身につけている。
「そうは言われてもな。俺自身は北領に居たから御祖父様達に任せただけだよ」
首をかしげ、遊び過ぎたと思ったのか決まり悪そうに頭を掻く。
「それは分かっている。俺が知りたいのは貴様には何が見えていたか、だ」
「珍しい事を言うね」
豊久が片眉を上げる。
「貴様の私見は俺も興味があるからな。なにしろそうは見えなくても元は選良参謀だ」
大尉となってから人務部監察課、軍監本部情報課防諜室、と後方で要職を歴任したが、その後、貴族将校なら余程のことがない限り関わることのない田舎貴族の鎮圧に回された事から出世街道から外されたのだろう、と噂されていた。
「こんな時にだけそんな事を持ち出すな」
そう言いながら酔眼なぞとはかけ離れた情報を扱う者の目で新城を観察し、口を開いた。
「――まぁ、良い。その前に確かめたい事が一つある。お前が近衛に配属されるのは確かなのか?」
「事実だ」
新城も油断なく答える。
――どうやら話す気になったようだ。ここからが本番か。
「当然、衆兵か。お前は馬と将家に嫌われるからな」
「馬は余計だ」
乗馬が苦手な育預が憮然として言い返す。近衛禁士隊は騎兵二個聯隊で編成されており、当然ながら大半が騎兵である。
「悪い、悪い。 しかし、お前が近衛か」
ひらひらと手を振って陪臣の後継者は抗議を受け流す。
「似合わないとは自覚している。だが実仁親王の内意を受けて決まったそうだ」
――厄介者を好き好んで受け入れる事を考えれば裏があるのだろう。
「衆兵、あそこは確か ふむ、実仁少将閣下の意向を考えれば十分有り得たな。
寧ろ此方の方が望ましいか?だとしたら――あぁそう言う事か」
目をつぶり、目尻を揉みほぐしながらかつては秀才参謀であった男は考えを巡らせる。
「新城、お前も苦労するな。だが今回は良い機会かもしれない」
再び目を外界に晒した時には既に酔いを感じさせるものはなく、悟性の光が宿っていた。
「義兄上にも同じ事を言われた」
「ならば尚更さ。若殿様は政治家としては一流の御方だ。
お前の事を損得ぬきで考えてやれるのはあの御方だけだろう。俺はもう――無理だからな」
寂寥とし
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