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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十二話 旧友、二人 (上)
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三書斎
駒城家御育預 新城直衛

「相変わらずだな、お前の部屋は」
 そう言って見回すと独立捜索剣虎兵第十一大隊に赴任して以来の数ヶ月完全に整理されていたのであろう豊久の部屋は、主が帰還して一日で哀れ元通りになっていた。
「ほら、柚木達の仕事を奪っちゃ悪いだろう。」
 部屋の主はそう嘯くが、単なる不精である。さすがに書架、書類棚は綺麗に整頓されているが、普段だらけている長椅子の周辺に乱雑さの最終防衛線を引き家令達への強固な抵抗を行っている。
 向かいの文机には丁度読み終わったのだろう、全て纏めて束ねられた手紙の束が端に追いやられている。
「随分と手紙が来ているな」
「ん? あぁ、急に親戚や友人が増えてな。場合によっては父上や御祖父様の所に持ち込なければならない物まであって大変だ」
 そう言いながら少々赤らんだ顔を文机に向ける。
「たかりか」
 新城にはその手の物は殆ど届いていない位階を持たない育預で敵ばかり多いからだろう。
「――他にも色々ある。これからの事を考えると面倒事は早いうちに対処しなくてはならないんだよ」
 そう言って豊久は曇らせた顔を逸らす。
「戦場からようやく離れても厄介事は先回りして待っている、それを処理したらまた戦地送りだろうし――」
 言葉を切って苦笑を浮かべて首を振る。
「――いかん、酔っているな。どうも愚痴が多くなる」
 身を縮こまらせるように椅子に座る。
「失礼します」
 若い少年の使用人が茶を持ってきた。
「あの、御昼食は此方にお持ちしますか?」
 
 新城の知る限りでは馬堂家は駒城に属する家では珍しく閉鎖的なところがある、使用人も例外ではなく、顔ぶれが変わることは余程のことがないかぎり年に数回のみだ。
――新しく入った使用人なのだろうか?
だが、遠慮がちであっても自分達を興味深そうに観ている姿は新城の知る限り、馬堂家――いや、将家が雇う使用人らしからぬものであった。
「いや、少ししたら喫煙室に戻らせてもらうよ。そっちに運んでくれ」
「はい、分かりました。」
 主と客人へ礼をして立ち去ると新城は遠回しに文句を言った。
「……随分と此方を見ていたな」

「自分で言うのもなんだが時の英雄が二人だから仕方無いさ。あの年頃にとって戦争と英雄は魅力的な冒険の場なのだろうから。
――まぁ確かに些か好奇心が強すぎるみたいだが。まぁ悪く思わないでやってくれ。
まだまだ文字通りの行儀見習いなんだ」
 目尻を揉みながら主が取りなす。
「それで? 態々こんな所に野郎を連れ込んで何のつもりだい?」
「何、貴様が居ないうちに随分と物騒になったからな。
色々と貴様からも話しを聞きたくてな」

「そんな事言われてもねぇ。ほれ、俺が居ない間って」
 ――俺、居ないしね。
 などと巫
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