第五話「LARGE一夏」
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ころだ」
「それが――俺に何か御用?」
「いいや、偶然アンタを見かけたから声をかけたくなってね」
「そう……」
「まぁ、強いて言うなら……今からマンライダー(人間ライダー)共を殺しまわろうかって思ってさ」
「――ッ!」
そのとき、その青年からはとてつもない殺意が浮かび上がってきた。
「ああ、お兄さんは良い人だから殺しはしないよ」
「……どうして、そんなことを?」
「理由は簡単だよ。人間の分際で、変身アイテムがなけりゃあ粋がれない痛い奴らだから。強化人間にされたこっちの身も知らないでさ。それと、ついでにISの女共も潰すこともリストに入れとくわ」
「どうしてまた?」
強めな口調になってしまった雄介だが、青年は続ける。
「今度はこの社会が多くの笑顔を奪ったんだろ? だったら、俺がクウガさんの代わりに笑顔を取り戻してやるよ」
「それが――本当に正しいと、思ってる?」
悲し気な口調で問う五代だが、それでも青年は平然と続けた。
「綺麗ごとを実現させようとしている間にも、多くの善良な人間達がこの世界から笑顔を奪われ、命を奪われていく。なら、手っ取り早くこの世界を壊しちまった方が早く解決するし犠牲もなくなるんじゃないか? 他の連中だって同じことを思うさ。仮面ライダー達も、こんな女尊男卑な世界を悪の組織から救う価値なんてあるのかってよ」
「ッ―――!」
その言葉に、五代は無意識に言い返せなくなった。いや、言い返したくなかった。誰が何と言おうとも、この世界こそが元凶なのだ。
今や、仮面ライダーはショッカーなどの悪の組織同様の存在へ仕立て上げられており、彼らに感謝を示す人間達は一人も居なくなった。もっとも今や人間がライダーになれる時代だ。ライダーの力を持った人間達が悪事を働くことも少なくはない。これらによって仮面ライダーという存在を「悪」とという一文字へひっくるめてしまったのだ。
「マンライダーどもが居なくなれば重犯罪はなくなる。この世界が終われば笑顔は帰ってくる。俺の言っていることが間違ってるか?」
「けど――だけど! 力を力で解決するのは……」
「あんただって、グロンギ共にも同じようなことをしてきた口だろ? 何をいまさら言ってんだ?」
「ッ!?」
もう、これ以上彼に言い返す術はなくなった。暗く俯く彼にそろそろと青年はここらで背を向けた。
「じゃあな、また会おうぜ」
そう言って、夕暮れの風に白髪を揺らしながら青年は去って行った。
最後に残された五代は、本当に世の中が「力」で解決するのだろうかと未だ疑問を抱くも、それに言い返せる言葉はなかった。
もう、この世界は――人間の世界には「暴力」でしか解決できないのかもしれないだろう。あきらめかけた五代から出てきた答えはそれであった
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