第五話「LARGE一夏」
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てやるのに苦労した者であるが、今ではそんなことを恐れる心配はないようだ。
「……それで、九豪よ?」
そういって滝さんは俺の隣に座った。
「今のお前の心境を聞きたい。悪いと思っているが、こうなった以上お前も覚悟を決めろ。お前の選択を戸惑ったことで朱鳥ちゃんが攫われちまったのは確かなんだ」
「はい……」
そんなの、もうわかっている。勝手に都合のいいことに理由づけた俺の身勝手な言い訳のせいであの子をこんな目に合わせたんだ。
「俺は、本当に大馬鹿野郎です!」
自分の両手を思いっきり握りしめて俺はそう答えた。
「だったら、やるべきことっつうのはわかるな?」
「もちろん!」
俺の迷いない顔に滝さんもフッと微笑んで懐から携帯を取り出した。
「うし、今から一条にも連絡して協力させるわ。名誉挽回だぜ、カッコよく決めろよ!」
アムズアップを向ける滝さんに俺も笑みを浮かべて頷いた。
*
土手の草原に横たわりながら、青い空にサムズアップの握り手を浮かべるその青年は、いつもとは似つかない悩む顔で何かを思い詰めていた。
――本当に、世界中が笑顔になったのかな?
グロンギを倒した後もいくつかの組織が現れ、自分が取り戻した多くの笑顔を容赦なく奪い去って行った。その都度に自分の代わりに幾人もの同じような人たちが笑顔を取り戻しては、また奪い去られてしまう。それを何度もい繰り返していく悲しい世界は彼にとって心が痛んだ。
とくに、ISによる女尊男卑いによって多くの男性たちが笑顔を奪われた。いくら自分や同じ人間達であっても今度は「世界」が笑顔を奪ったのだ。さすがにこれだけは笑顔を取り戻すことはできないだろう。
もう、あの時のような笑顔に満ちた世界は取り戻すことはできないことに彼は心底心が沈んでしまった。
心から笑顔になることはできない。本当にこの世界は何なんだろうか、守る価値はあるのだろうかという彼らしくない疑問さえ抱き始めていた。
「そこのお兄さん――」
「ん?」
思いつめる彼に一人の若者の声がした。白髪で長身な、顔の整った美少年ともいえる様子をした若者であった。
「アンタ……クウガっていうんだろ」
「え!?」
とたんに飛び起きる様に起きた青年はいつものような明るい表情で彼にふるまった。
「え、なに? もしかして――俺のファンとか?」
「まぁ、興味あるんだよ。同じ同業者って感じでね」
「……もしかして?」
すると、フッと彼「五代雄介」は真顔に戻った。
「そうだよ、ほら」
そういって青年は微笑んだまま足元に転がっていた大き目の石を手に取ると、それを顔色一つ変えることなく片手に粉々に握りつぶして見せた。
「……君、強化人間って人たち?」
「そうだな。そんなと
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