第五話「LARGE一夏」
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だいぶ処分してまとめたから、もう部屋に余計なものはないよ? あったら処分してくれ」
そう、言いたいことだけ言うと、一夏はそのまま食い終えた飯の皿を抱えて流しの方へ持って行った。
「ふざけるな! お前は私の弟だぞ? 別人になる必要なんて……」
何度も引き留めることを言い続ける千冬であるも、そんな彼の言葉などスルーして一夏は二階の自室へ向かった。
「……いよいよだな?」
来週からはついに姉からの拘束も逃れて一人暮らしができる。大方、家事全般や自炊もやりこんできたから姉がいない時でも一人暮らしは慣れている。
「後は……」
仕事だ。それについて親友の店でバイトと考えているが、バイトでは不安だ。そんなとき、ふと職安へ寄った際にある求人を手にした。
雑用で清掃業、給料も一人暮らしには十分すぎる給料だし、前のバイトでも経験はある。待遇もいいから打って付けであった。
しかし、やや好条件すぎるのが逆に怪しいが、それでも今の自分には必要である。それに相手側に連絡したところ、人手が欲しいから面接抜きで即採用してくれた。
そして、彼は仕事に出かけた千冬に置手紙を残して家を出て行った。
『出ていきます、さようなら。一夏より』
ただ、それだけだ。念のため履歴書も書いたし、一夏は荷物をまとめて家を出て行った。
都心に出て、一夏は何時もと変わらぬ風景を見ながら社会人にまみれて予定の場所へと向かった。
周囲の風景は実にみじめで嫌な光景ばかりだった。こんな爽やかな朝の時間帯にも女尊男卑は露骨に見えてくる。
「ここをこうして……あと、こうすればいいわね?」
「あ、あの……でしたら、こうすれば効率がいいのでは?」
「黙ってなさい! アンタ、幾ら年上だからって私は女性なのよ!? 大人しく言うとおりに従ってなさい!!」
「す、すみません……」
OLが、胸を張って後ろの男性社員を引っ張っているように見えるが、そこから聞こえてくる会話のほとんどはただ単に女側が威張っている様にしか見えなかった。
――いやな光景だな……
そう睨みつけて、一夏は再び足を動かした。
「本当に、この世界はどこへ向かっているんだろうか……」
つい、彼はそう愚痴った。女だから戦争は起きない。争いもない。平和が続く。どこかのバカみたいなフェミニストの男がそうアホなことを言っていた。
こういう状況になって、そいつの顔をもう一度見てみたいものだ。絶対、女に敷かれている奴に違いない。
「……」
ため息をついて、彼は待ち合わせの公園に向かった。仕事内容は詳しく言うと公共物の清掃業務というらしい。
「まだかな……?」
ベンチに座って待っていること十分ほど。愛嬌のよさそうなスーツを着た眼鏡の男が現れた。
「ああ、ここだったかい?
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