第25節「混沌のラメンタービレ」
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
「まったく……情けないですね、僕は……」
翼が視界から消えてしまった頃、緒川はボソッと呟いた。
ff
その頃、エアキャリアは目的のポイントが沈む海上にて停止飛行していた。
「マリア、お願いします」
ナスターシャ教授の指示通り、マリアは機器を操作する。
キャリアの上部から発射されたドローンが展開し、円形の反射板を展開する。
「シャトルマーカー、展開を確認──」
「ステルスカット、神獣鏡のエネルギーを集束──」
エアキャリアを迷彩していたウィザードリィステルスが解除され、その姿が夜空に現れる。
そのエネルギーは、機体先端に迫り上がった発射口へと集束を開始した。
「長野県、皆神山より出土した神獣鏡とは、鏡の聖遺物。その特性は光を屈折させて、周囲の景色に溶け込む鏡面迷彩と、古来より伝えられる魔を祓う力──聖遺物由来のエネルギーを中和する、神獣鏡の力を以てして、フロンティアに施された封印を解除します……」
車椅子の肘置きに備え付けられている、遠隔操縦桿の発射ボタンを押そうとするナスターシャの手。
するとウェル博士はその手首を掴み、ナスターシャに問いかけた。
「フロンティアの封印が解けるという事はその存在を露わにするということ。全ての準備が整ってからでも遅くないのでは?」
「心配は無用です」
「……」
怪訝そうな顔をしながらも、ウェル博士は手を放す。
「リムーバーレイ……ディスチャージャー」
エアキャリアの先端から、紫色の光が放たれる。
神獣鏡の光は、展開されたシャトルマーカーに反射され、海の底に沈むフロンティアの中心部へと照射された。
「くくく……これで……フロンティアに施された封印が解ける……解けるううぅぅ──」
海底から水飛沫が煙のように噴き出し、水面は音を立てながら大きく波紋を広げる。
悠久の時を経て、深淵より何かが浮上しようとしていた。
「……解け──ッ!」
ウェル博士の興奮が頂点に達する。
己が人の頂に立つ幻想。それを実現させる最後のピースの出現を前に、ウェルの昂ぶりは抑えられなくなっていく。
遂にフロンティア──新天地のコードネームを与えられしものが、その正体、その全容を現す……誰もがそう思っていた。
だが、フロンティアが浮上することはなく、噴き出していた水飛沫は徐々に小さくなっていった。
やがて、海面は再び元の静寂を取り戻す。
ウェル博士は狼狽し、足元をふらつかせた。
「と、解け……ない……ッ!」
「……出力不足です。いかに神獣鏡の力と言えど機械的に増幅した程度ではフロンティアに施された封印を解くまでには至らないということ」
両手を拳に握り、ウェル博士はナスターシャ教授に苛
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ