三十六 主従
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らかに答えた。
舞台上の役者のように大袈裟な身振りで、カブトは心底嬉しそうに笑う。
それは、いつもの胡散臭い笑みではなく、心の底からの笑顔だった。
「うちはの血を引く君でさえ、才能の上に胡坐を掻いてる、ただのガキだ。天才(彼)には程遠いな」
「……なにが言いたい?」
カブトの急な変わり様を、警戒心を露わに観察していたサスケがようやく口を開く。
それを静かに見返して、カブトは眼鏡をカチャリとかけ直した。
「だから、感謝してるのさ。これでようやく…────」
大蛇丸の右腕的存在であったカブト。
彼はアジトの監視や実験体の管理だけでなく、薬物を使用した大蛇丸の肉体の調整や治療を担当している。
その薬物療法をわざと誤り、大蛇丸の焦燥感を募らせ、早急にサスケを器にしようと動くように仕向けた張本人は、顔を覆うように眼鏡を手で押さえる。
右近/左近・鬼童丸を殺したと見せかけ、実はその死体を偽造した為に、巻物に保管しておいた十五・六歳の男の遺体のストックが足りないと南アジト監獄にいる春野サクラを呼び寄せた。
更に、大蛇丸を助けに向かわぬようにと、火影直轄部隊暗部構成員のリストの写しでビンゴブックを作れと命じてアマルとザクを部屋に缶詰めにする。
そうして、木ノ葉の忍びとサクラが対戦しているこの騒ぎに乗じて、サスケに大蛇丸を乗っ取らせることを黙認した。
全て。
そう、全てが、彼の為に。
大蛇丸ではない。
己のアイデンティティを確立させてくれ、自分が何者であるかを教えてくれた彼の為に。
あえて、嫌っているふりをし、彼の手を煩わせてしまう故に借りを作るのを良しとしなかった。
大蛇丸を信頼させ、右腕的存在にまでのし上がったのも、全ては彼の為。
どれだけ主人を変えようと、スパイをしようと、カブトは終始一貫として一途に彼に仕え続けていた。
──────うずまきナルトに。
眼鏡ではなく、堪え切れない笑みを押さえている手を、カブトはようやく顔から離す。
蝋燭の明かりを反射する眼鏡。
廊下を照らす蝋燭の炎が、カブトの眼鏡をより一層赤々と染め上げる。
その赤は、カブトの歓喜の色を確かに示していた。
「僕は、本当の主人の許へ帰れるのだから」
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