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戦国異伝供書
第八十九話 初陣での大手柄その二

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「手柄はです」
「下の者達に立てさせよか」
「はい」
 それが筋だというのだ。
「ですから」
「うむ、ではな」
「采配に専念されて下さい」
「承知した、者共このままじゃ」
 元就は志道の言葉を受けてあらためて命じた。
「攻めよ、特にじゃ」
「特に?」
「特にといいますと」
「あの者じゃ」
 敵の中にいる熊谷を指示して言うのだった。
「あの者を討てば褒美は思いのままじゃ」
「わかり申した、ではです」
「それがしが討ち取ります」
「いや、それがしが」
「まずは遠巻きに矢を撃て」 
 熊谷、彼にというのだ。
「そしてまずは傷を与えな」
「そうしてですか」
「そのうえで、ですか」
「その後で」
「皆で槍を突き出してな」
 そうしてというのだ。
「仕留めよ、よいな」
「あれだけの大男だからですか」
「強いですか」
「だからですか」
「一人では敵わん」
 こう見てのことだった。
「だからな」
「まずは矢ですか」
「それを放ってですか」
「そうして討ち取りますか」
「そうしますか」
「いや、矢ではな」
 それではとだ、元就は兵達にあらためて話した。
「おそらくあの男は倒せぬ、尋常な武ではない」
「だからですか」
「それ故にですか」
「矢では熊谷殿は倒せませぬか」
「それは無理ですか」
「うむ、だからな」
 元就は兵達にさらに話した。
「その後でじゃ」
「矢を放って傷を与え」
「その後で、ですか」
「槍や刀で攻めよ、いいな」
 こう言うのだった。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「まずは矢を放ち」
「それから」
「そうせよ、強者を倒すにはまずはじゃ」
 見れば熊谷は強気の采配を振るっている、そうしつつ自ら刀を抜き毛利家の軍勢に対して怒りの目を向けていた。
 その彼を見つつ元就は言うのだった。
「やり方を考えるべきじゃ」
「左様ですか」
「それで、ですか」
「矢で傷付け」
「そしてそこからですか」
「槍と刀でな」
 それでというのだ。
「止めを刺す、そうしてあの熊谷殿を倒せばじゃ」
「大きいですな」
 元網も言ってきた。
「この戦は」
「うむ、だからな」
「それで、ですか」
「ここはじゃ」
「それで、ですか」
「必ず仕留める」
 こう言うのだった。
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