Mission
Mission2 アステュダメイア
(1) ドヴォール~バープリボーイ
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よこれ何だよこれ! 兄さんはこんなこと子供ん時からやらされてたのか? 俺と暮らし始めてからもずっと? 俺に隠して? ふざけんな! これじゃ何も知らなかった俺だけ馬鹿みたいじゃないか!)
激昂が口から出かかって――不意に冷めた。ルドガーは脱力してソファーに逆戻りして、頭を抱えた。
ルドガー・ウィル・クルスニクはユリウスにとってそれだけ脆弱で軽い存在だったのだ。話すまでもない、話しても力になどなれないと、兄はルドガーをそう見なしてきたのだ。
「そっちの用はすんだみたいだから、そろそろいいかな。本題に戻っても」
カウンター席に戻っていたリドウがルドガーの前にやって来る。
苦く思い出す。治療費の問題は解決していない。
「別に無理に君が払う必要はないだぜ、ルドガー君。身内に泣きつくとかね。たとえば、兄貴にとか」
ルドガーは反射的にリドウを睨んだ。
「ルドガーの所持金でなくてもいいの?」
ずっと黙っていたユティがテーブルを降り、ルドガーとリドウの間に立った。
「きっちり払ってもらえるんであれば、俺は金の出所には拘らないよ。借金でも、口では言えない黒い金でも」
「それを聞いて安心した」
ユティはしゃがんで、三脚ケースを開けてごそごそと中身を探る。やがてユティは中から一枚の紙を出し、リドウに差し出した。
「小切手。ワタシ名義の。2000万ガルドある。これで治療費足りますよね」
愉悦一色だったリドウの相好が崩れた。
リドウは小切手を引ったくると、まじまじと検分する。粗探しでもしているのかもしれない。理由は不明だが、リドウはルドガーに借金を負わせたいらしかったから。
「ユティ、そんな大金どこから、いや、何で俺たちに」
「ユリウスに頼まれた。自分がいない間、ルドガーのこと」
ちり、と胸が焼けた。やはりユリウスはルドガーをどこまでも子供扱いする。
決して追いつかせてくれない。教えてほしいのに、力になりたいのに。いつも兄には届かない。
「ワタシ名義だけど、お金自体はワタシが稼いだのじゃないし。だから返そうとか思わなくていいから」
ユティはルドガーの二の腕をふん掴んで立たせて乱暴に前に押し出した。次いでソファーのエルの両脇に手を差し入れてエルを持ち上げ、ルドガーの前に下ろした。
「お釣りはいらない。ルドガーとエルは帰してもらいます」
ユティはルドガーとエルの背中をぐいぐいと押して、早足でバーの出口に向かった。ルルが後ろをほてほてと付いて来る。
「いいのかねえ、ルドガー君。『知り合い未満』の若い女の子に借金肩代わりさせて。社会人としてどーなのかなー?」
「…っ」
「安い挑発に乗らない。行くよ」
こうしてルドガーたちはバー
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