第三章
[8]前話
「こんなことは本当にです」
「はじめてなんですね」
「そうです」
「メグちゃんっていいまして」
女の人は自分の犬の話もした。
「女の子なんです」
「そうですか」
「そちらのワンちゃんは」
「はい、雄です」
「そうなんですね」
「はい、本当にこの度はすいません」
「いいですよ、メグちゃんとも仲良くしてくれますし」
女の人は一樹ににこりと笑って話した、そしてだった。
二人で朗らかに話した、この時からだった。
一樹はこの女性、渚千輪との交流をはじめた、交流はすぐに交際になってそうしてだった。
両親に彼女を紹介してから言った。
「ココがすぐに懐いて」
「それでか」
「それからなのね」
「付き合う様になって」
そしてというのだ。
「今度な」
「結婚するんだな」
「そうするのね」
「ああ、本当にはじめて会って」
それでというのだ。
「ココは懐いたからな」
「いい娘だったわね」
母の鈴子が言ってきた、もう五十をとうに過ぎているが肌はまだ瑞々しくはっきりとした目と面長の顔も整っている。伸ばしている黒髪も奇麗だ。
「明るくて礼儀正しくて」
「ココも大事にしてくれてるよ」
「だからなのね」
「プロポーズもしたしな」
「そうなのね」
「ああ、式には来てくれよ」
これが両親への言葉だった。
「是非」
「そうさせてもらうわね」
「そうか、初対面で懐いたか」
父も笑顔で言ってきた。
「それじゃあな」
「もうそれでわかるってことか」
「生きものは自分が好きな人がわかってな」
「いい人に懐くな」
「誰があの婆みたいなのに懐くか」
この場でも自分の母親を悪く言う。
「そういうことだ」
「いい人、自分を好きな人に懐くか」
「だからあの人とはな」
「俺も幸せにやっていけるか」
「ああ、今度はココだけじゃなくてな」
「あの娘ともだな」
「家族になれよ」
こう我が子に告げた。
「いいな」
「そうしていくよ」
一樹は父に笑顔で応えた、そうして千輪と籍を入れて一緒に住む様にした。するとココもメグと結婚した。そのうえで一樹だけでなく千輪とも家族になった。千輪にも可愛がってもらっている彼は本当に幸せそうだった。
見抜く目 完
２０２０・５・２５
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