第二章
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「尻尾だって振らないし近寄ろうともな」
「しないんだな」
「あの婆はどんな生きものにも懐かれなかったんだ」
「お祖母ちゃんは」
「そうだ、本当に自分だけでな」
死んで随分と経つ自分の母親について憎悪を剥き出しにした顔で語った。
「我儘で遊んでばかりで家事も何もしないでちょっとしたことでヒス起こしてな」
「最低な祖母ちゃんだったって聞いてるよ」
「しかもそんな性根だったからな」
「親戚皆から嫌われててだよな」
「生きものにもな」
「犬にも猫にもだよな」
「全然懐かれていなかったんだ」
自分以外の生きものは皆大嫌いという人間だったからというのだ。
「だから爺ともな」
「いつも喧嘩してたんだよな」
「ああ、だからな」
「祖母ちゃんもそうでか」
「生きものはわかるからな」
「自分が嫌いな人はか」
「だからお前が結婚したい相手を見るならな」
それならというのだ。
「いいな、ココを見るんだ」
「そういうことだよな」
「ああ、そうしろよ」
「わかったよ、それじゃあな」
一樹は父の言葉に頷いた、そうしてだった。
結婚のことも考えていた、その中で交際していた相手を家に呼ぶとココは全く懐かなかった、それでプロポーズを考えていると。
その相手がとんでもない浪費家で自己中心的でまさに自分の祖母の様な人間とわかり交際自体とを止めた、後でその女がやらかした数々の揉めごとを聞いてプロポーズしなくて本当によかったと思った。
そして一人身になったが。
ある日ココを散歩に連れて行っているとだった。
向かい側からココと同じトイプードルを連れた若い茶色の髪をボブにした女の人と出会った、すると。
「ワンワン」
「あっ、ココ」
ココはその女の人に自分から駆け寄った、全く知らない人だったのに。
そしてじゃれてきた、女の人もそのココを見て言った。
「あれっ、この子メグちゃんと同じ種類ね」
「あの、すいません」
一樹はその人に謝罪の言葉を述べた。
「うちのココが」
「その子ココちゃんっていうんですか」
「はい、こんなことははじめてです」
初対面の相手に懐くことはというのだ。
「本当に」
「そうなんですか」
「いい子なんですよ」
一樹は自分からココのことを話した。
「優しくて人懐っこくて」
「そうした子ですか」
「絶対に噛まないし言うことも聞いてくれるし」
そのココの話をさらにした。
「とてもいい子です」
「そうなんですね」
「はい」
実際にというのだ。
「凄く」
「そうですか」
「ですが本当に初対面の人にこうまで懐くなんて」
「ないですか」
「そちらのワンちゃんとも仲良くなっていますし」
見れば今はお互いでじゃれ合っている。
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