第一章
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見抜く目
山本一樹は忌々し気な顔の父の十三にこう言われた。
「うちの婆は自分以外の生きものは全部大嫌いなんだ」
「婆ってお祖母ちゃんだよね」
「ああ、あいつだよ」
恭平にとっては父方の祖母、自分にとっては実の母親だが心底憎いという顔と声での言葉であった。
「あいつはそんな奴なんだ」
「自分以外はなんだ」
「全部大嫌い、もう自分しかないな」
「そんな人なんだ」
「そんな奴だからな」
それ故にというのだ。
「自分以外の生きもの全部から嫌われてるんだ」
「嫌うからなんだ」
「嫌わられるんだよ、だからお前もあの婆には近寄るな」
これが父の言いたいことだった。
「幸い今は爺と二人暮らしだしな」
「爺はお祖父ちゃんだね」
「そうだ」
この父は自分の両親と折り合いが悪い、それで子供にもこう言うのだ。
「あいつ等のところには絶対に行くなよ」
「そうなんだね」
「それでな、生きものは自分が嫌いな相手もわかるんだ」
「そうなんだ」
「露骨に顔に出て唸ったり怯えたりするからな」
「それでわかるんだね」
「人は隠したりするけれどな」
その感情をというのだ。
「そうするけれどな」
「それでもなんだ」
「ああ、そしてな」
「そして?」
「このことは覚えておけよ」
「生きものが嫌いな人はそれでわかるんだ」
「ああ、よくな」
こう我が子に言った、そして。
父は祖母つまり自分の母親を終生憎み続け近寄ろうともしなかった、そうして彼女が死んでも葬式には出たが。
それだけだった、死んでからも憎み続けた。
一樹は大人になってから犬を飼いはじめた、一樹は黒髪の上を立たせた風にした大きな目に細い奇麗なカーブを描いた顔の青年になっていた、背は一六九位で痩せている。職業は機械メーカーのエンジニアになっていた。飼っている犬はココと名付けて家族として仲良くしていた。雄の濃い茶色の毛のトイプードルでとても仲がよかった。
だが一樹は結婚する相手に絶対に必要な条件を設けていた、それは何かというと。
「うちにはココがいるから」
「だからか」
「ああ、結婚する人もな」
父にもこう話した、太って厳めしい顔をしている彼に。髪の毛の質は親子で全く同じものでありそこは遺伝を感じさせた。
「生きもの、犬を大事にしている人じゃないと」
「結婚出来ないか」
「ココは家族なんだよ」
恭平ははっきりと言い切った。
「だからな」
「それでだな」
「ああ、ココを大事にしてくれないと」
家族である彼をというのだ。
「駄目だよ」
「そうか、ならな」
「あの子を大事にしている人にするよ」
「だったらな」
「親父俺が子供の頃話してくれたな」
「生きものは自分が嫌いな相手わか
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