疾走編
第二十七話 全てを知る者
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
静に状況を見ておられた。そんな閣下が艦隊を無秩序に前進させるとは思えないのです。艦隊の行動が無秩序になる、何らかの理由があったのではないですか?」
「…私が艦隊を制御出来なかっただけだよ」
「閣下は勝てると思ったのでしょう?ならばそれを艦隊に示達したはずです。味方の数も多い、普通に考えれば、閣下のご意志に従えば勝てると艦隊の皆も思うでしょう。ですが現実は違った。私はこう思っています、閣下が最初に仰った事も、今仰った事も、後付けの理由ではないかと。最初から何かの目的があってこのヴァンフリート星系に来たのではないかと。その目的が露見する事を恐れた結果が、あの無秩序な艦隊行動になったのではないかと」
「……」
「まあ聞いてください。まず、閣下と話した印象ですが、失礼ですが閣下は愚かな方とは思えません。聡明で、いくらでも理路整然と装う事の出来る方だと思いました、装いたくなくてもね。…話を戻します、我々はヴァンフリートW-Uに極秘の補給基地を建設中でした。勿論極秘ですから、我々は知りませんでした。知っていたのはビュコック提督だけでした。本来なら、我々の艦隊はここに来るはずではなかったのです。提督の副官の進言により、ヴァンフリート星系を哨戒を兼ねて調査しようという事になった」
「…何故だね。ここは君達の領土なのだから、調査など必要ないだろう」
「データが古すぎたのです。同盟建国当時のデータしか無かったのです。ここは同盟の領域とはいえ、イゼルローン回廊のすぐ傍で、いわゆる係争地となっています。そんな危険な所を落ち着いて調査しよう、なんて出来やしません。同盟でも民間人はここまで来ませんし、戦い辛い場所だから放置されていたのですよ。副官の進言は尤もなものでした。地の利を得るためです、と。ビュコック提督としては極秘だから此処には近づきたくなかったろうが、副官の言う事が至極全うだったためにその進言を採らざるを得なかったのです」
「……」
「ヴァンフリートW付近で金塊の詰まった帝国規格のコンテナを発見しました。更にW-Uで見つけたのは
サイオキシン麻薬とその生産プラントでした。極秘なのをいい事に不正、しかもサイオキシン麻薬の密売を企んでいる者が居ると我々は判断しました。生産者は当然売り手です。となると買い手が居なくてはならない。そこに閣下の艦隊が現れたのです。これは偶然でしょうか」
カイザーリングは俯いていた。肩も少し震えているようだ。…そうだ、バーゼルとヨハンナだ。カイザーリングの初恋の人、ヨハンナ。彼はヨハンナをずっと愛していた。しかし彼女はバーゼルの妻になった。バーゼルは麻薬密売に手を染めた。しかもバーゼルはカイザーリング艦隊の補給担当だ。カイザーリングの初恋の人が自分の妻、しかもカイザーリングが今もヨハンナを愛している事をバーゼルは気づいていたのだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ