第一章
[2]次話
レスキュー隊員の出会い
広沢俊は黒髪を短く切った濃い眉に引き締まった顔の筋肉質の大男だ、背は一八五ある。諸くぎゅはレスキュー隊員だ。趣味はジム通いにトレーニングという典型的なそちらの人間だ。
仕事柄突然要請が入ることもある、だがそれでも人助けの仕事だからとそのことに誇りを持って生きている。
それは非番の時も同じで一日一善のモットーにも従い何かあったら誰かを助けている、それはこの時も同じで。
「おい、犬が溺れてるぞ」
「川に落ちてるぞ」
「犬?」
俊はたまたま通りがかったその声を聞いて足を止めた。
それで話が聞こえた橋の方に行くとだった。
一匹の茶色で腹の毛はやや白いコロコロした垂れ耳の大型犬が川の中で溺れていた、種類は雑種の様だ。
その犬を見て小学生位の男の子が橋で泣いていた。
「ポチ、ポチ!」
「どうしたんだ?」
「ポチが橋から落ちてたんだ」
こう言うのだった。
「橋の手すりのところが急に壊れて」
「ここか」
見れば手すりのところが壊れていた、どうも老巧化していた様で随分古ぼけている。
「そこからか」
「たまたまポチが当たったら壊れて」
「そこから落ちたんだな」
「そうなの」
「よし、わかった」
俊はそこまで聞いて頷いた、そしてだった。
すぐに上着を脱ぐと川に飛び込んだ、そのうえで。
犬を助けて川から上がった、そうして橋のところに戻って男の子に言った。
「大丈夫だぞ」
「ポチ生きてるんだね」
「ああ、水は飲んだみたいだけれどな」
それでもというのだ。
「安心していいぞ」
「そう、よかった」
男の子も笑顔で応えた。
「ポチ無事なんだ」
「ああ、よかったな。ただな」
「ただ?」
「念の為病院に行くか」
「これから?」
「ああ、溺れたからな」
だからだというのだ。
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2024 肥前のポチ