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温もりと光
第一章

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         温もりと光
 両親が酔っ払い運転のチンピラの車に撥ねられて死んだ、その葬式の後で満月暖奈はすっかり塞ぎ込んでしまった。
 それで姉で同居している美奈は塞ぎ込んでいる妹に彼女の部屋の扉の向こうで気遣って声をかけた。黒髪をショートにしていて背は一五七位だ、色白で穏やかな顔をしている。人形の様に整った感じがする。
「大丈夫?」
「まだ・・・・・・」
 返事は小さなものだった。
「もう少し待って」
「そう、あと少しね」
「学校にはね」
 高校、そこにはというのだ。
「あと少しでね」
「行ける様になれそう?」
「何とか」
「送るから」
 姉は妹にこう告げた。
「車で」
「気を使わなくても」
「無理出来ないでしょ」
 妹の顔を見て言った、黒髪を長く伸ばしていてはっきりした目の色白の少女でやはり人形を思わせる整った感じがする、背は一五六程だ。
「今は」
「それは」
「どういう時もあるから」
 あえて優しい声をかけた。
「だからね」
「送ってくれるの」
「大丈夫になるまでね。それで学校でもね」
 そちらでもというのだ。
「学校にはお話してあるから」
「何て?」
「事情が事情だから」
 両親の死に強いショックを受けている、その為心がすっかり塞ぎ込んでしまっているからだというのだ。
「だから保健室での学習もね」
「学校が許してくれたの」
「だからね」
「学校に通って」
「それだけで充分だから」
 今の暖奈はとだ、美奈は話した。
「無理はしないでね」
「学校に行ける様になっても」
「そうしてね、姉さんもいるから」
 一人でない、美奈はこのことも妹に話した。
「何かあったら言ってね」
「何でもいいの?」
「どんなことでも聞けるから」
 あえて聞く、妹の為にというのだ。
「だからね」
「それでなの」
「無理はしないでね」 
 こう言ってだった。
 美奈は両親の死ですっかり心が塞ぎ込んで悲しみに押し潰れている妹に寄り添った。幸い両親の事故死で保険金が入ってしかも美奈は働いているので経済的には困らず両親と一緒に暮らしていた一軒家に住み続けている。
 だがそれでもだ、暖奈の心は戻らず学校に通える様になっても塞ぎ込んだままで一人になると両親の死に泣くばかりだった。
 美奈はそんな暖奈を何とか元の明るい少女に戻したかったがそれでも暖奈は戻らず美奈は自分の無力さも感じ困り果てていた。だがそれでも妹に寄り添い続けた。
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