怪盗乱麻のサイドチェンジ
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怪盗としてあるべき姿だと信じていたから。
出来ることならそうしたかった気持ちはあるけど……自分の心に嘘はつけない。
『チュニンは下がっててよ。オレは一対一でキュービと話す約束をした。あんたがいると邪魔だ』
「どうして……どうしてこんなやつに捕らえられたのです!! あなたは幼くとも誰より怪盗としての自分を大切にしていたのではなかったのですか!」
言葉に耐えかね、矛先を変えるようにわたしを糾弾する。
チュニンにも、キュービを慕う理由はあるしその気持ちは本物なんだろう。
今のわたしは答えることが出来ない。どう切り抜けた物か考えたとき、部屋の奥から鈴を転がすような声がした。
「ありがとう。私の強くて優しい妹。……後は、約束通りに。あなたならできるわよね?」
チュニンは頷いて扉を開ける。巨大な扉がゆっくり開くとともに、彼女はわたしたちを一瞥して下がっていった。
(……いくよ、あなたを蔑ろにし続けた家族に会いに)
(行こう、君を騙した女城主にけじめを付けるために)
私たちは、部屋の中に入っていく。
そこには、初めて会ったときと同じように。喪った片目を眼帯で隠し、誰よりも優しい表情で微笑むキュービがいた。その首元にはルビーとサファイアが勾玉のようにネックレスとして付けられている。大会の開会式で見たものと違いない。
「小さな怪盗さん。本当に残念です。わたくしは、貴女にもお客さんにも心置きなく楽しんで貰えればと思ってお呼びしたのに、怪我までさせてしまって……」
その声に、表情に、一切の演技も偽善も感じなかった。あの日フロンティアで傷つけられた女の子は、記憶を失ってもトラウマを抱えたままここにいる。
誰かに傷つかずに遊んで欲しくて色々手を尽くしてくれている。ポケモンカードのシステムも、わたしを招いた八百長も。
……きっと、サフィールを頑なに遠ざけてきたのも。
『謝る暇があったら約束を守ってくれないかな。オレと管理者が一対一で話す。怪盗とお喋りしろなんて言ってない』
彼は間髪入れず要求した。息が荒い。弟である自分を目の前にしてさえ、キュービの目は彼を見ていない。
「はい。ですが約束はこうですね? 話をするのは、怪盗を離してから。さあ、彼女を解放してください。それすれば約束を守りましょう」
『わかった。……じゃあ、そっちに行かせるよ』
サフィールが、わたしと繋いだロープを放す。解放された怪盗はゆっくりと、キュービを刺激しないように彼女の元に歩み寄った。
「ああ、男の子と二人きりで手錠をかけられて。どれだけ心細かったでしょう。ごめんなさい、こんなはずじゃ……」
その言葉は、怪盗乱麻にもアッシュ・グラディウスにも向けられていない。
キュービ自身が
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