怪盗乱麻のサイドチェンジ
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が付くことになるけど?』
サフィールの息づかいが、心苦しそうに震える。わたしも望んだこととはいえ、他人に刃を突き立てるのに抵抗があるのは当然だ。
だけど、チュニンを狼狽させるのには十分だった。
『武術バカで人体に詳しいチュニンなら、これが血糊なんかじゃない本物の怪我だってわかるだろ? よかったよ、あんたが来てくれて』
「ばっ……!? ま、待ちなさい、わかりました。シャトーまで案内しましょう。だからキュービが悲しむことはしないでください」
やっぱり、わたしのことはどうでもいいらしい。
文句を言いたいのはやまやま、でも余計なことを言う余裕はない。
チュニンは肩を震わせ、私たちに背を向けて歩いて行く。わたしたちも……いや、怪盗を引き連れてサフィールも歩いて行く。
そこからシャトーまでの道のりは、驚くほどスムーズだった。
「道を空けなさい。キュービ姉様の命令で怪盗を城まで連行しています」
手錠をかけられて歩いているから通行人に詰め寄られたりしたら困るところだけど……無理矢理先導させられるチュニンの雰囲気は、興味本位の野次馬が茶々を入れられるようなものでは決してなくて。
明らかに言葉が足りていない説明なのに、誰も疑問の言葉を挟むことが出来なかった。ひそひそと、様子をうかがう声が聞こえる。
「本当に捕まっちまったのか?」
「茶髪の子、ポケモンカードゲームのチャンピオンじゃない?」
「あんな怖い顔のチュニンさん、初めて見た……どんな相手だって笑顔で張り倒してたのに」
重苦しい雰囲気の中をゆっくり歩く。わたしは人前で注目を集めるのは慣れてるけど、サフィールは息苦しそうに俯いている。
(大丈夫?)
(……なんてことないよ。これでもホウエンのカードチャンピオンだからね。何か言われるのは、慣れてる)
小さく聞こえた返事は、言葉とは裏腹にやはり苦しそう。早くキュービのところにつかないと危ないかもしれない。
シャトーについてからも、チュニンはゆっくり歩いている。それにしても、随分遅いような。
『……っ、オレ達が気になるんだろうけど。さっさと歩いてよ。傷跡が残ったら悲しむのはキュービなんだろ?』
「あなたが付けた傷でしょう!」
『ああ、それとも。実は勝手に約束の時間を破ってオレ達のところに来たのかな?』
「馬鹿なことを……!」
チュニンを急かす。彼女は今にも振り向いて拳をたたき込んでやりたいと思っているのがはっきりわかるほど怒りを滲ませながらも、歩調を速めた。
「……キュービ姉様。サフィールと怪盗乱麻をお連れしました」
そして、前来たときと同じ、キュービの部屋がある大きな扉の前までやってくる。
あのときは、無断で誰にも見つからないように忍び込んだ。それが
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