第81話『エンジョイ』
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うお、見てなかった!」
だが結月を出し抜いて喜んでいたのも束の間、その後ろから来ていた大地にあっさり捕まってしまう。全く、2対1なんて卑怯じゃないか。
「お疲れ様です、三浦君」
「あ、戸部さんも捕まってたんだ。いやぁ、いくらこの人の壁があっても、やっぱりあの2人には敵わないや」
「そうですね。お二人とも、とても足が速くて」
牢屋代わりのビーチパラソルの中に入りながら、晴登はやれやれと首を振った。
優菜の言う通り、大地と結月の足の速さには目を見張るものがある。恐らく、学校で一二を争うレベルだ。そんな警察から泥棒が逃げ切れる訳がない。
「これじゃ、暁君の出番は無さそうだね」
「そうだな。その方が俺はありがたいけど」
退屈になった晴登は、同じくパラソルの下で座っている伸太郎に話しかける。
彼は他の2人とは真逆で、運動の鈍さは筋金入りだ。人を追いかけるくらいなら、待っている方が断然いい。この調子だと、牢屋に助けに来る人が現れそうもないが。
「残りは莉奈と柊君・・・まだ可能性はあるか…?」
しかし、残るドロ2人もまた運動神経は良い。もしかしたらケイ2人を突破して、助けに来てくれるかもしれない。
牢屋は360度開放している。ドロ2人が同時に前後から来れば、伸太郎1人を出し抜くことは可能だろう。
「まぁ、それを2人がわかってればって話だけど──」
「三浦君、あそこ見てください」
「え、あそこ?・・・って、莉奈が追われてるのか…」
何ということだ。優菜に示された方向を見ると、莉奈が大地と結月に追われているのが見えた。
となると当然、先の作戦は実行できなくなってしまう。さすがに莉奈でもあのケイから逃げ切れるとは思えないし、これはもう無理か──
「っ! 来たか!」
「あ、柊君!」
「助けに来たよ! 三浦君!」
伸太郎の反応で、晴登はこちらに向かってくる狐太郎の存在に気づく。
いや、というか伸太郎はよく気づいたな。死角に近い方角だと思うのだが。伊達に見張りはやってないということか。
「あんたを捕まえれば俺らの勝ちだ」
「……っ」
伸太郎の言う通り、莉奈が大地と結月に追われている以上、こちらの加勢は望めない。つまり、ここで狐太郎を捕まえればケイの勝ちはほぼ確定する。
「どっからでも来やがれ…!」
「くっ…!」
こうなれば、始まるのは当然伸太郎と狐太郎のタイマン。自信があるのか、伸太郎は笑みを浮かべている。そりゃ守る方が楽ではあるし。
「はぁぁ!」
「へっ、喰らえっ!」
「あ、ずる!?」
狐太郎が意を決して飛びこんで来たその瞬間、
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