暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜漆黒の剣聖〜
アインクラッド編〜頂に立つ存在〜
第二十八話 神速に瞬く貪欲な龍の刃
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た。鯉口をきり、アヌビスとの距離が詰まると抜刀した。今までにはない速度に一瞬、一瞬だけアヌビスの反応が遅れた。だが、その一瞬が何より致命的だった。

「――――っ!?」

「甘いわよ!」

咄嗟に鉄の杖でガードしようとするアヌビスであったが、それをすり抜けるようにベガの刀が閃いた。一瞬の交差のうちに与えられたのは一発だけだったが、当たらないよりはマシだろう、と結論付ける。
アヌビスの方へカーソルを向けてみると、HPゲージが一本目の半分くらいまでしか減っていなかった。速度の速いMobは大概が防御力はないものだが、アヌビスはそこそこ防御力があるらしい。もっと削れていると思ったベガは軽く落胆する。残念ながら、世の中そう上手くいくものじゃない。

「・・・≪神速剣≫まで使ったのになぁ」

呟くようにぼやくベガ。呟かれた言葉の中にあった≪神速剣≫とは、ベガの持つユニークスキルである。その効果は、動作の初動及び動作そのものを爆発的に速める、と言うものである。その動作の中には、ソードスキルや普通の攻撃も含まれる。しかし、これには致命的な弱点、というよりも欠陥があった。速度を爆発なまでに速めるため思考と動作がかみ合わなくなるのだが、ベガはそんなことにもろともせずに≪神速剣≫を使っている。

「・・・・・まぁ、ダメージを与えられたってだけで一歩前進よね」

言い終えると同時に駆け出していく。同じくアヌビスも地面を蹴り駆け出していくが、ベガの速度の方が圧倒的に速い。徐々に押されるアヌビスは何とか鉄の杖で攻撃を受けているが、ベガの巧みな剣術がそれをすり抜けてダメージを与えていく。その攻撃を五回も受けたアヌビスのHPの総量は残りゲージ二本と半分だった。それを見たベガは残念な表情でソードスキルを発動させるために構えを取る。

「・・・・・なかなか楽しめたのに、残念ね」

ベガの刀が白銀色のライトエフェクトを纏う。そして一言アヌビスに向かってポツリと呟いた。

「―――――終わりよ」

その言葉が言い終えるのと同時にベガの姿が掻き消える。その速度は今までベガの速度を見切っていたアヌビスでも感知が不可能だった。アヌビスは咄嗟に鉄の杖を地面と水平に持ち、顔の前で守るように構える。しかし、次の瞬間には、アヌビスの後ろで刀を納める音が響いた。
アヌビスがそちらを向くと、背を向けて刀を納めた姿のベガがいた。その無防備な背中を攻撃しようと駆け出した瞬間、いつの間にかアヌビスの鉄の杖が二つに斬られていた。それを見ながら、わけもわからず首をかしげるアヌビス。

その直後、アヌビスの体はポリゴン片となって虚空に消えて行った。

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