アインクラッド編〜頂に立つ存在〜
第二十八話 神速に瞬く貪欲な龍の刃
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なのだ。おそらく、このソードアート・オンラインの中でベガの速度を超えるプレイヤーはだれ一人いないだろう。たとえそれが、ソレイユやシリウスだったとしても。あの≪閃光≫アスナとてベガの速度には到底追いつけない。そのベガと初めて渡り合える敵が目の前にいるのだ。笑わずになどいられなかった。
「・・・ねぇ、そう簡単に終わらないわよね?やっと、まともに張り合える敵が現れてくれたんだから」
妖艶に笑いながらアヌビスに向かって言葉を告げるベガ。その言葉を告げられたアヌビスは了解した、と言わんばかりにさらに速度を上げてきた。ベガも負けじと速度を上げる。風を斬る音のみが響き渡る。周りの風景が止まっているように思える。自然と笑顔が漏れてしまう。笑わずになどいられない。これほどまでに興奮する戦いはベガは初めてだった。今ならわかる。命を懸けて死合った、ソレイユとシリウスの気持ちが。だからだろう、名乗らずにはいられなくなった、現実の名を。たとえそれがプログラムが相手であってもである。そして、
「天衝鳴神流居合術 鳴神華織よ。我が最速の剣を持って、お相手するわ!」
高らかに名乗りを上げ、剣を振るっていく。
◆
絶え間なく響き渡るのは金属同士がぶつかった時におこる甲高い金属音。しかし、それを行っている当人たちの姿を捉えるのは至難と言ってよかった。それだけではなく、何合、何十合、何百合と打ち合っていくが、未だに決定打どころか有効打さえ与えられていなかった。なぜなら、なかなか斬撃が当たらないのだ。有効打が与えられないのではない、斬撃そのものが当たらないのだ。まるで、ただのプログラムによって動くMobが学習しているようにさえ思える。それほどまでに卓越した防御や回避をアヌビスは行っていた。
「・・・・・この速度まで反応するのね」
ベガの言葉が響くとともに足を止めるベガとアヌビス。息切れはせず、ただじっと相手を見据えている。これが人間同士の戦いなら何とかなるのに、とはベガの心の声である。
このままでは埒が明かない、としか思えなかった。仕方ない、と一言呟くと納刀してウインドウを表示させ操作しいく。そんな無防備な立ち振る舞いをしているにもかかわらず、アヌビスは何をするわけでもなくただベガを見据えているだけだった。正確に言えば、何もしなかったのではなく、出来なかったのだ。ベガから放たれる闘気がアヌビスに攻撃をさせなかったのである。数秒後、ウインドウを操作し終えたベガはあらためてアヌビスに向き直った。
「・・・・・お待たせして悪いわね」
一言だけ呟くと居合いの構えを取る。ベガが構えを取るとアヌビスも構えを取る。静寂が迸り、張りつめた雰囲気があたり一帯を包む。それでもベガに焦りは一切ない。
その雰囲気を破ったのは、やはりというべきか―――ベガだっ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ