第三章
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「私達は君のことがわかっているから」
「クウン?」
「辛い思いをしただろうけれどもう大丈夫だからね」
「俺はチワワのこと勉強して飼いますから」
信二は獣医にこのことを約束した。
「ですから」
「大事にしてくれますか」
「絶対に」
獣医にこのことを約束した、そうしてだった。
信二は犬を引き取って自宅で飼いはじめた、そうして二月程経ってだった。
マンションの彼の部屋に来た雄太郎にその犬を見せて笑顔で話した。
「キャンって名付けたんだよ」
「いつもキャンって鳴くからだよな」
「ああ」
その通りだと答えた。
「そうだよ」
「やっぱりそうだよな」
「キャンキャン」
実際に今キャンキャンと鳴いていた、信二はそのキャンを見つつ雄太郎にさらに話した。
「いい娘だよ」
「大人しい娘か」
「ああ、鳴くけれどな」
それでもというのだ。
「優しくて人懐っこくてな、俺が落ち込んでる時とか傍にいてくれてな」
「それは本当にいい娘だな」
「そうさ、それでチワワのこと色々調べながらな」
そのうえでというのだ。
「一緒にやっていってるさ」
「犬も種類によって色々だよな」
「それでその子によってな」
「そこは人間と同じだな」
「そのことをわからないとな」
どうしてもというのだ。
「駄目だな」
「やっぱりそうだよな」
「命を預かるからな」
それだけにというのだ。
「それ位はな」
「ちゃんとわかってないと駄目だな」
「本当にな、だからこれからも勉強しながら」
笑顔の中に真剣さを入れてだった、信二は話した。男子大学生らしいこれといった派手な装飾のないその部屋の中で。
「一緒に暮らしていくな」
「チワワのことにか」
「キャン自身のこともな」
そのキャンを見ながら話した。
「そうしていくな」
「そうか、頑張れよ」
「頑張ってないさ、楽しんでるさ」
「そうなのか?」
「だってな、こいつといるといつも物凄く楽しいからな」
それでというのだ。
「頑張ってなくてな」
「楽しんでるか」
「ああ、そうしてるな」
笑顔で言ってだった、信二はキャンを撫でた。するとキャンは明るい声で彼に顔を向けて鳴いた。その声には怯えたものは全くなかった。親しみだけがあった。
よく鳴く理由 完
2020・5・23
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