第二章
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「俺が飼うな」
「そうするんだな」
「俺大家だしな」
信二は雄太郎に笑って自分のことを話した。
「マンション自体のな」
「親父さんから管理任されてるんだったな」
「マンションの一つな」
実は信二の家は元々地主で広い土地を持っていた、そして今はマンションやアパートを幾つも経営しているのだ。そして信二はそのマンションの一つを大学に通いながらも大家として任されていてそちらからかなりの収入、学費を含めたそれも手に入れているのだ。
だからだ、犬を飼うこともというのだ。
「充分いけるからな」
「金の心配はいらないか」
「後は犬の飼い方教えてもらってな」
「そいつ飼うんだな」
「そうするな」
こう言ってだった、信二は。
まずはキャンプ場を後にしてそうしてだった。
家の近所の動物病院の前で降ろしてもらってそこで犬を診てもらった、健康のことでは問題はなかったが。
チワワという種類について優しい顔の獣医は信二に話した。
「飼われるんですよね」
「そのつもりですが」
「よく鳴く子なのでそこは注意して下さい」
「実際に保護してからここまでずっと鳴いてました」
信二は獣医に犬を見せながら話した、見れば犬は今は診察台の上で怯えている、そして鳴いてもいる。
「今もですけれど」
「そうした種類なんですか」
「はい、そうです」
その通りだというのだ。
「チワワは」
「そうですか」
「小さい犬ですね」
その大きさについても話した。
「とにかく」
「はい、本当に」
「犬で一番小さな種類で」
「そうなんですか」
「それで自分を大きく見せようとです」
そう考えてというのだ。
「とにかくです」
「鳴くんですね」
「そうなんです」
こう信二に話した。
「そのことは覚えておいて下さい、多分捨てられたのも」
「よく鳴くからですか」
「そうでしょう」
「あの、飼う前か途中で調べますよね」
信二は獣医に怪訝な顔で尋ねた。
「その飼う種類のことは」
「そうしない人もいます、生きものは皆同じとか思って」
「人間も色々なのにそんな筈ないでしょ」
「それがわかっていない人もいます」
「そうなんですか」
「それで、です」
獣医は悲しい顔になって話した。
「この子、雌ですが」
「その娘もですか」
「よく鳴くので捨てられたのでしょう」
「そうですか」
「ええ、けれど大丈夫だよ」
獣医は今度は犬に話した、優しい声で。
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