第8章:拓かれる可能性
第245話「決して見果てぬ憧憬」
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腕を左手で支える。
まさに何かを掌から放つような構えのまま、自身の全てを体の奥に集中させる。
「……“我が身は英雄に非ず、その背に憧れる者”」
今も昔も変わらず、彼は憧れていた。
主人公という存在に、力ある存在に。
何よりも英雄に憧れていた。
「“この手は一度たりとも届かず、未だ彼方への羨望は消えない”」
現実を思い知り、一度は諦めた。
決してそんな存在にはなれないと。自分では、絶対に力不足になると。
……しかし、それでも憧れは消えなかった。
「“―――故に、想いは決して枯れる事はなく”」
だからこそ、優奈を好きになった時、強くなると決意出来た。
大切な人を守れる、そんな存在になろうと、頑張れた。
思い描く主人公になれなくとも、自分に出来る事はあると思えた。
「“我が身は、永久に果て無き憧憬で出来ている―――”!!」
……これは、そんな彼の心象、彼しか持たない“領域”だ。
―――“決して果てぬ憧憬”
「ッ………!」
なだらかな丘を中心に、大きな草原が広がる。
夜空には眩い程に輝く星々があり、手を伸ばせば届きそうな程だ。
そして、帝の正面遠くには同じく眩い程輝く月があった。
決して届かない、だけど手を伸ばしたくなる。
そんな心象を表した帝の“領域”が、辺りに広がっていた。
「……そう。貴方はこんな“想い”を……」
その心象を、優奈は肌で、心で、魂で感じていた。
しかし、この場は戦場。すぐに気を引き締める。
「時間稼ぎの必要はもうなくなったわ。……行けるわね?帝」
「……当然だ……!」
帝の力強い返事と共に、突き出したままだった右手を中心に魔法陣が出現する。
そして集束していく魔力。同時に、周囲の理力も集束していた。
「手始めに行くぞ……!!“スターライトブレイカー”!!」
それは、なのはの切り札である魔法だった。
デバイスもない状態だというのに、なのはと遜色ない規模と威力で放たれた。
「(……わかる。俺の“領域”の扱い方が。この力の、使い方が……!)」
その攻撃自体は、大した損害を与える事はなかった。
だが、帝は確信していた。“これなら勝てる”と。
「舐めるな……!」
“天使”の一人がついに肉薄してきた。
後続に神なども襲い掛かってくるため、優奈一人では抑えきれない。
帝を守るために張った“壁”もあったが、今はなくなっている。
帝が魔法を放つ際、その“壁”の理力も集束させたからだ。
「助けは?」
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