暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン27 「呪われし」懐古の悲願
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ず警戒しながら、ゆっくりと廊下を進む。道中にあったトイレや風呂場に繋がる扉は全て半開きになっており、そのどこにも人の気配はない。10数えないうちに突き当り、リビングへの扉に辿り着いていた。

「隠れても無駄なんてこと、わかっていると思ったんだがな。それとも、逃げたの……かっ!」

 最後の言葉を言い切ると同時に、土足で木製の扉を蹴り開ける。そこにはまたしても乱雑に積み上げられたカードの山、山、山……そしてその中央で座り込んで鼓を見据える、くすんだ茶髪にワインレッドのジャージ上下といういでたちの小柄な女。立ち上がったとしても、せいぜい鼓の胸ぐらいに頭が届くかどうかだろう。両者の視線がぶつかり合い、先に口を開いたのは部屋の中の女だった。その小柄な体躯からは意外なほどに気だるげな、甘ったるい声が響く。

「来たわね。今、ちょうど蛇ノ目が倒されたところよ。それにしてもデュエルポリスフランス支部長様が直々のお出迎えとは、随分と大きく見られたものね」
「なに、ほんの成り行きでな。それより蛇ノ目の時点でだろうとは思っていたが、やはりお前だったか……七曜(しちよう)

 七曜と呼ばれた女が、鼓の言葉に小さく笑う。積み上げられたカードの山をパラパラと片手で弄びながら、不満げに口を尖らせた。半ば無意識に、そのカードへと視線を向ける。タイム・ボマー、残骸爆破、破壊輪廻。

「あら、私じゃ不満だったかしら?」
「少なくとも、意外性はないな。あの男がよくつるんでいた同業者なんて、それこそお前ぐらいのものだった」

 それもそうねとまた笑いながらも、その目は油断せずに鼓の一挙手一投足を逐一見つめている。もっとも、それは鼓の側も同じことだ。両者の距離はほんの1メートル半、つまりお互いが飛び掛かろうと思えば十分可能なほどでしかない。もしどちらかが隙を見せた場合、両者の会合はデュエル以前に物理的な終焉を迎えるだろう。気軽に聞こえる会話の裏では、すでに心理戦は始まっている。

「彼、昔から私にはご執心だったしね。今回にしたって、ちょっとお願いしたらすぐに首を縦に振ってくれたわよ」
「違いない。目に浮かぶようだな」

 さほどおかしくもなかったが、そこで2人同時に笑う。しかし笑えば笑うほど部屋の空気はより重苦しいものになっていき、先に作り笑いを引っ込めたのは七曜だった。

「やめよ、やめ。ねえ、鼓。私としてはね、今度の計画はデモ行為だと思ってるのよ」
「デモ?デーモンの間違いだろう、お前にはぴったりだ」
「あんまり上手くないわよ、それ。デモンストレーション、よ。妨害電波を無視できる新型『BV』と、それを使って引き起こされる大災害。その威力を世界中に知らしめることができれば、各国政府もこちらの要求にノーとは言えなくなる。極端な話、この爆発さえ起こせ
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