ターン27 「呪われし」懐古の悲願
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けた鼓だったが、結局は何も言わなかった。どうせこの老獪にして陰険なおきつねさまのことだ、この後でどうなるかは予想もついているだろう。いや、それどころか、こうなることすら予期したうえでわざと顔を出した可能性まである。
果たして、その予想は正解だったらしい。部屋を見渡したのちに巴は、にんまりと笑みを浮かべたのだ。
しかし修羅場真っ最中の糸巻と鳥居に、そんなことに気づく余裕などあるはずもなく。まず口火を切ったのは、鳥居だった。目の異様な光はそのままに、そのくせひどく落ち着いた口調で目の前の上司に声を掛ける。
「なるほど、糸巻さん」
「あー、久しぶりだな、鳥居。そのな、これはだな」
「俺も結構、いろいろ動いてたんすけどねえ。まったくびっくりですわ、さすがは糸巻さん」
何か言い返す暇もなく、矢継ぎ早に皮肉のこもったナイフのように鋭い言葉を投げつける。そのたびにイライラと床に打ちつけられる松葉杖の先が、カツカツカツと高い音を立て続けた。
「だってそうでしょう?俺たちの仕事は、テロリストの撲滅と『BV』技術の破棄。デュエルコロシアムの時も、精霊のカードなんて代物の時も。そのために、俺たちは戦ってきてると思ってたんですけど。糸巻さん、あんた誰と手を組んでるんすか」
「……」
いかなる言い訳や理屈も無駄だと悟り、完全に押し黙る糸巻。その沈黙をどう解釈したのか、馬鹿にしたような短い笑いを漏らした鳥居が松葉杖の先を突きつける。
「そりゃあ、いつまで経っても俺たちの仕事が終わらないわけだ。デュエルポリスとテロリスト、それも俺の身近なところでこんなずぶずぶに繋がってたとはね。ああまったく、これまで全然そんなことにも気づかなかった俺も大馬鹿野郎ですよ」
さすがに反論しようとしたのか、そこでようやく糸巻が口を開く……しかし何か言うより先に鳥居が、黙っていろとばかりに片手を振ってやめさせた。
ただでさえ治らない怪我と不自由な体、巴戦での敗北のショックがその身体と精神を両方から弱めていたところに、かつての同志でもあった一本松への襲撃は完全にとどめを刺してしまったらしい。彼の心はもはや見る影もなくその柔軟性を失い、固く閉ざされてしまっている。たとえ真実がどうであろうとも彼の中では自分の思い描いたシナリオのみが事実であり、他人の話を聞き入れるつもりはないらしい。
「もういいですよ、今日の所はいったん引き下がります。じゃあ、またいつか会うこともあるでしょう」
そう言い捨ててさっと怪我人とは思えないほどの機敏な動きで身を翻して開いたままの窓からベランダに……そして欠片の躊躇もなく、4階のそこから身を躍らせた。
「お、おい!鳥居!」
我に返った糸巻がベランダに駆け込み、かつての部下が飛び越していったその手すりから身
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