暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン27 「呪われし」懐古の悲願
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、超重武者ビッグベン−Kを破壊するわ」

 やりきれなさそうに目を伏せる鼓の前で、ビッグベン−Kの体が上からなにか目に見えない力で押さえつけられていくかのように軋みだす。あちこちのパーツが負荷に耐えきれずに全身から上がる細かな火花と悲鳴のような金属音を断末魔に、唯一鼓の場に残っていた最後の守りはいともあっさりと突破された。もはやエルドランドの黄金の石畳で、銀髪の彼女を守るモンスターは存在しない。

「返り討ち、残念だったわね。でも、これで分かってもらえたかしら?今回の計画は、私もそれなりに本気なの……黄金卿エルドリッチで攻撃、ミリオネクロ・ペイン!」

 黄金の輝きが、黄金の石畳の上を通りまっすぐに迫ってきた。無言で目を閉じ、すぐに訪れるであろう衝撃を静かに覚悟する。最後に頭をよぎったのは、絶対ここぞとばかりに何かしら言ってくるであろう糸巻になんと言い返そうか、そんなことだった。

「む?」

 妙だ。いつまで経っても、次に来るはずの衝撃がない。危機の寸前には時間がスローに感じると言っても、さすがに限度というものがあるだろう。ぱっと目を開けた鼓が目にしたものは、驚くべき光景だった。

「これは……!」

 黄金の輝きを鼓に当たる寸前の位置で四散させる、鐘のようなシルエットのモンスター。その名を小さく口にすると、同じく異変に気が付いた七曜が後を続けた。

「バトル……」
「フェーダー……?」

 相手の直接攻撃宣言時に手札から特殊召喚され、バトルフェイズそのものを強制的に終了させる悪魔族モンスター。当然、鼓のデッキには入っていない。それどころかこの瞬間、彼女には手札すらないのだ。
 ならばこのバトルフェーダーは、いったい誰が。その疑問に答えるかのように、起動中のデュエルディスクを装着した第三の人影がベランダの窓を外から開けて部屋の中へと入り込んできた。ソリッドビジョンが外部環境の変化に一瞬乱れ、またすぐにエルドランドの景色を映す。ギプスで固定された片足に松葉杖、体中のあちらこちらに乱暴に巻かれた痛々しい包帯。誰がどう見てもボロボロの、立って歩いていることすら奇跡のような若い男。しかしその目だけは体の状態と反比例するかのように、ギラギラと異様な光を湛えている。
 鼓には、その顔に見覚えがあった。

「……鳥居浄瑠、だったか。久しぶりだな、糸巻の奴が随分心配していたぞ」

 自分の名を呼ばれた男……鳥居が、わずかに鼓へと視線を向ける。刺すような視線に射貫かれて反射的に身構えるが、鳥居の方はすぐに鼓への興味をなくしたように七曜へと向き直った。ゆっくりと開いたその口から、感情を押し殺したかのような低い声が漏れる。

「ようやく見つけたぜ、『成金の女王』」
「あら、私も今頃モテ期かしら。人気者は辛いわね」

 
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