第24節「守りたい笑顔」
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ぐ傍に立てかけられていた足場用の鉄パイプを倒してしまった。
「──調ッ!」
慌てて駆け寄った切歌は、ガラガラという金属音に頭上を見上げる。
「あ……ッ!」
そこには、立て付けの悪さから、今の衝撃で崩れた足場から落下してきた大量の鉄パイプが迫っていて──
ff
昨日降ったからか、今日の天気は朝から晴天だった。
マリアはナスターシャ教授の車椅子を押し、近くにあった湖の湖畔まで来ていた。
晴れ渡る青空と温かな太陽、それを映す湖面はきらきらと輝き、昨日の雨で濡れた草花もまた、涼やかな秋風に揺れている。
彼女らが身を潜めるテロリストでなければ、絶好の散歩日和だと言えただろう。
「これまでの事で、よく分かった……。私の覚悟の甘さ、決意の弱さを……。その結末がもたらすものが、何なのかも……。だからねマム、私は──」
「その必要は、ありません」
「──え……?」
ナスターシャ教授の意外な言葉に、マリアは目を見開く。
「あなたにこれ以上、新生フィーネを演じてもらう必要はありません……」
「──マムッ!何を言うのッ!?」
「あなたは、マリア・カデンツァヴナ・イヴ……。フィーネの魂など宿していない、ただの優しいマリアなのですから……」
既にナスターシャ教授は、その覚悟を決めていた。
これ以上、未来ある子供達に“必要悪”という名の重責を背負わせるのは、彼女にとっても心が痛むことなのだから。
一人の大人として、彼女達の育ての“母親”として、その罪を背負うのは自分一人であるべきだったのだから……。
「フィーネの魂はどの器にも宿らなかった……。ただ、それだけのこと」
「ふ……」
(やはり、そういう事でしたか……)
だが、その言葉を陰で盗み聞きしていた者がいることに、二人は気付かない。
その男を最も警戒していた少年もまた、底を尽きかけている食料や日用品を調達するため、街に出払っている。
ウェル博士の邪なる野望が、フィーネの面々でさえ及ばぬ水面下で今、動き出そうとしていた……。
ff
「あれ……?」
落下する鉄パイプから調を庇い、目を瞑っていた切歌は、いつまで経っても訪れない痛みと衝撃を不審に思い、顔を上げる。
「な、なんデスかこの力……こんなの、まさか……」
反射的に空へと伸ばした手の先を見ると、そこには……半球状で紫色に発光する、亀甲模様のバリアが、切歌と調を囲むように展開されていた。
「何が……どうなってるデスか……?」
それが何かを理解した時、少女の心を恐怖が駆け巡った。
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