第24節「守りたい笑顔」
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「数値は安定、年齢の割に大した体力です。それとも、振り絞った気力でしょうか?」
ウェル博士に手による処置が終わり、ナスターシャ教授のバイタルがようやく安定する。
時刻は既に夕刻、エアキャリアは山奥に着陸し、その機体を隠していた。
「よかった……」
「本当によかったデスッ!」
喜ぶ調と切歌に、マリアとツェルトも安堵の息を漏らす。
四人の顔を見ながら、ナスターシャ教授は良心を苛まれていた。
(私はこの優しい子達に、一体何をさせようとしていたのか……。所詮、テロリストの真似事では、迫りくる災厄に対して何も抗えないことに、もっと早く気付くべきでした……)
「それでは、本題に入りましょう」
そう言ってウェル博士は、モニターに回収してきたそれを映し出す。
「これは、ネフィリムの……」
「苦労して持ち帰った覚醒心臓です。必要量の聖遺物をエサと与える事で、本来の出力を発揮出来るようになりました。この心臓と、あなたが5年前に入手した──」
「ッ……!」
そこでマリアが一瞬、息を詰まらせる。
「お忘れなのですか? フィーネであるあなたが、皆神山の発掘チームより強奪した神獣鏡の事ですよ」
「ッ……え、ええ、そうだったわね……」
「マリアはまだ記憶の再生が完了していないのです。いずれにせよ聖遺物の扱いは当面、私の担当。話はこちらにお願いします」
「これは失礼」
歯切れの悪い回答に、ナスターシャ教授がフォローを入れる。
ウェル博士は無駄に恭しく頭を下げ、ツェルトがそれを見て舌打ちした。
「話を戻すと、フロンティアの封印を解く神獣鏡と、起動させるためのネフィリムの心臓がようやくここに揃ったわけです」
「そして、フロンティアの封印されたポイントも、先だって確認済み……」
「そうですッ! 既にデタラメなパーティーの開催準備は整っているのですよッ! あとは、僕達の奏でる狂想曲にて全人類が踊り狂うだけ……ははははは……うわはははは……ッ!」
パチパチと拍手し、小躍りしながらウェル博士は興奮気味に笑った。
(この言い草……やっぱりこいつ、世界とかどうでもいいんだろうな……。自分が英雄になる、その事実だけがこのマッド野郎の欲するものだ。用心しておかなきゃ、計画の土壇場でどんな裏切りを見せるか分かったもんじゃない……。獅子身中の虫ってのは、まさにこいつの事を言うんだろうな)
ツェルトだけでなく、これにはマリアや調、切歌も苦い顔をするしかない。誰がどう見ても気持ち悪いのだから。
「近く、計画を最終段階に進めましょう……。ですが、今は少し休ませていただきますよ……」
「ふん……」
作戦会議の終了を言い渡し、ナスターシャ教授は会議室を後にする。
ツェルトは背中を向けるウェル博士
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