後編
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同じ。『美紀』という人間に対するお兄ちゃんのイメージが具現化されたのがこの私。そして私を作り出したやつは、私が火事で焼け死ぬところを見せて、お兄ちゃんの心をゆさぶり、自分の思い通りにお兄ちゃんを利用しようとしているの。」
美紀は自分の胸に手をやり、微笑んだ。
「でもね。なんだかお兄ちゃんの中で、私に他の人のイメージが混ざっちゃってるみたいなの。」
「他の人・・・。」
「お兄ちゃんが妹みたいに思っている人。お兄ちゃんが守りたいと思っている人。しかもその人が私の中でどんどん大きくなっているの。こうしている間にも・・・。」
その時、美紀の背後が赤く燃え上がった。
いきなり荒垣の姿が消えた。音もなく風船が割れたような消え方だった。まるでそこにある、見えない空間の裂け目に吸い込まれたかのように・・
「あっ荒垣さん?」天田があっけにとられて声をもらした。
「荒垣さんの反応は、この歪みの中に消えました。」
アイギスが胸の高さほどの空中の一点を指さしてそう告げる。
『彼女』が息を飲んだ。
(間違いない。荒垣さんはそこから真田さんのところに行ったんだ。)
荒垣がいたはずの場所を見つめ、『彼女』はそう確信した。
(強い絆があれば道は開ける。)
テオドアの言葉が頭に浮かぶ。ひょっとして、テオドアが何か手助けしてくれたのか。
『彼女』は思わず大声で叫んだ。
「真田さん!私も・・・私もそっちに行く。私も一緒に戦う!」
みるみる炎が広がっていく。あっという間に周りじゅうから炎が噴き出してきた。
「火事だ。」驚いて荒垣が叫ぶ。
「美紀、こっちに来い。逃げるぞ。」真田が手を伸ばした。
しかし、美紀は首を振って後ずさる。
「私に混ざっているその人は、私と違ってとっても強い人。守ろうと思っても、大人しく守られているような人じゃない。誰かが利用しようと思ったって、大人しく利用されたりしない。だから私も・・・。」
美紀の背後の燃え盛る炎の中から、あの強敵シャドウが現れた。
美紀に覆いかぶさるように立ちはだかる。
「美紀!」真田が必死に叫ぶ。
「行って、お兄ちゃん。この場所ではお兄ちゃんたちに勝ち目はない。シンちゃん、お兄ちゃんを外に連れ出して。」
美紀はそう言うと、シャドウに向き直った。
もう、辺り一面 火の海だ。肌がチリチリする。着ている服まで燃えだしそうだ。
「ここは私が食い止める。」
そう叫ぶと、真田と荒垣の目の前で、美紀の姿がみるみる成長していく。そしてついには、月光館学園の制服を身にまとい、薙刀《なぎなた》を構えた凛々しい姿へと変貌した。
「早く行って!」
美紀だったはずの少女は、そう叫ぶと手に持った薙刀《なぎなた》を旋回させ、シャドウに切りつけた。
「行くぞアキ。」
荒垣が真田の後ろ襟をつかんで引きずる。
激し
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