第47話 草刈りの終わり
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年後、ラインハルト=フォン=ローエングラムによる「神々の黄昏」が始まった時、ランテマリオ星域の後方にあって十分に距離の離れたこのマーロヴィア星域に有力な軍事物資生産設備を有しておくことは悪いことではない。艦艇を自力生産できるほどの設備は難しくとも、艦船の補修や改造ないしミサイルなどの消耗兵器生産設備を構築することができれば、少しは勝率が上がろうというモノだ。そこには機雷の取り扱いに慣れた嘱託従業員もいる。
そう、機雷。地雷同様あればあったで民生の邪魔でしかないが、貧者の持てる数少ない戦略兵器でもある。ランテマリオの戦いでも回廊の戦いでも、いや帝国の内戦においてもその有効性は証明されている。それをより大胆に、攻勢防御として利用できないか? 指向性ゼッフル粒子があれば容易に開削されることだろうが、戦闘宙域を大きく制約することはできる。そして艦隊行動のチョークポイントとなる回廊はひとつではない。
想像の翼を広げて、地球が人類の中心地から離れて八〇〇年近く経っているのに、未だ机の上から絶滅していない紙にいたずら書きのようなメモを書いていると、鍵をかけていない俺の執務室の扉からファイフェルが飛び込んできた。いやに慌てているので収容所にぶち込んだ海賊たちが反乱を起こしたのか疑ったが、ファイフェルの顔には危機というより驚愕の方が多かったので、俺は一度だけ深呼吸をすると席に座ったままファイフェルに言った。
「どうした。パルッキ女史に言い寄られでもしたか?」
「そんな縁起でもないことを言わな……あぁ、すみません。少し慌ててました」
予定通り軍務一年で中尉に昇進し、軍隊生活に慣れ始めたのか軍用ベレーを被ることが少なくなったファイフェルは右手で小さく頭を掻くと、苦笑して応えた。
「先輩はエル・ファシル星域をご存知ですか?」
俺がファイフェルに何も応えることなく、無言で立ち上がり携帯端末を確認したのは、もし俺以外に転生者が居たら当然の行動だと思うだろう。
宇宙歴七八八年八月二八日。端末の画面にはそう記されていた。
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