第47話 草刈りの終わり
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なったコーヒーを啜るのだった。
それからというもの俺は司令官代理という形でほぼ毎日、惑星メスラム上の司令部と収容所、惑星軌道上の廃船置き場と機雷をバラまいた小惑星鉱区を行ったり来たりという生活に落ち着いた。収容所で生き残った海賊の中から従順で比較的若い要員を選考し、廃船置き場に蓄積されているゼッフル粒子入りの廃船を引っ張り出し、星系間航行能力のないタグボートで小惑星鉱区まで押し出し、無人操縦で小惑星帯に突っ込ませる。
熱反応型の自動機雷は慣性航行状態では反応しないが、機関を始動するとその熱源を感知して作動する。それを利用してタグボートで初速を作り、適当なポイントに到達した時点で廃船の機関を始動させる。始動すれば機雷のもつ小さいが高出力の推進機が作動し廃船に勝手に突撃してくれる。そして廃船の内部にはゼッフル粒子が搭載されているので、機雷の爆発熱に煽られ膨大なエネルギーを発して誘爆し……その熱がさらに近くに敷設された機雷を誘引する。地球時代によく使われた自走式機雷処分用弾薬を廃船で置き換えたわけだ。
これで残った廃船分の機雷は処理できるが、爆破した後の後始末は掃宙艦と特務艦の出番となる。特務艦と言っても帝国の輸送艦を改造したもので、掃宙艦に先導されつつ爆破処理が完了した宙域に侵入し、航行に支障のある破片を掻き集める役目を帯びている。これには専門の航路開削用の機材が複数積み込まれており、民生用の航路開削船とほぼ同等の能力を有していているが、この手の機材はマニュアル操作なので、そこに戦傷者や降伏した海賊などを要員として配置する。
勿論破壊された廃船は資源として再回収される。小惑星で宇宙船用装甲用材を生産している鉱山船はいくつか残っているから、再び精錬されて用材となる。元々私企業だった鉱山・精錬企業も、海賊との癒着があったことを盾にマーロヴィア星域政府に「収用」という形で公的管理となり、生産された用材も軍が安値一括で購入し、マーロヴィア星域外への軍事輸送船団に資材を積み込み、リオヴェルデ・エリューセラ・タナトスといった辺境部にある軍直轄造兵廠へと送られる。
日本で言う第三セクターに近いが、現在の自由惑星同盟において財務委員会の圧力が強いのか、それとも軍事費の圧迫が強いのか、いわゆる国有企業は水素などの生活必需資源とインフラに限られている。行き過ぎた新自由主義とまでは言わなくても、国家が私企業の領域に立ち入って公金を利用して営利を得ることを民業圧迫として敬遠しているし、政府に批判的な勢力はそういう公金が注ぎ込まれる企業の汚職をよく槍玉に上げる。パルッキ女史が「植民地の女王様」を嫌がるのも、官僚の本能である自己権限の拡大をいらぬところから疑われたくないという側面もある。
そして将来的に……今のままでは難しいかもしれないが一〇
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