第46話 隣地の草刈り
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はこちらの世界に転生して、ジュニアスクールでの銃の扱い方講座が最初。当然ながら自分の手で人を撃ち殺すかもしれない状況というのも初めて。射撃の訓練成績は悪くはなかったが、ケリムでの海賊討伐戦以降、俺は人殺しとしてのステップを着実に踏んでいる。
「検察長官トルリアーニ。貴方には海賊への情報漏洩、それに伴う収賄の容疑と……治安維持要員カッパー小隊長殺人未遂容疑が懸かっている。速やかに武器を捨てて投降せよ。でなければ生死問わず拘束する」
やや大きめの声で告げると、中からヒッっという悲鳴が聞こえてくる。それも男性の声だ。彼の秘書は女性だから彼で間違いない。
「トルリアーニ、聞こえてるな。武器を扉に向けて捨て投降しろ。殺人まで加われば、貴方の量刑は死刑以外無くなる。一つしかない命を大事にしろ」
二度目の人生を銀英伝の中で生きている俺としては、言ってる傍からおかしなセリフだが、テンプレみたいな立てこもり犯への勧告だから仕方がない。しかし俺が告げてから一〇秒経ち、三〇秒経ち、一分経っても反応がない。迷っているのか、それとも戦う気でいるのか。検察官として現場に立つことはなかったかもしれないが、少なくとも立てこもり犯に対する警察の行動を彼は理解しているはずだ。時間を掛ければことが大きくなり、それは事態収拾に対しても負荷となる。
「突入します。いいですね」
小声で憲兵隊小隊長に告げると、小隊長は無言で頷く。俺は中腰になり小隊長はその後ろに立ち、バグダッシュは反対側で中腰に、その背後に憲兵隊員が並ぶ。カメラで見た時に確認したが、扉に対して右奥に執務机、その手前にソファがあるから、まずは視線と射線を俺に向けさせるため、部屋の隅にまっすぐ突入する必要がある。声には出さず、口唇だけでカウントを始めると、バグダッシュと憲兵隊員の動きが止まる。太腿に力を入れ、脇を閉じ、ブラスターの銃口を地面に向ける。五……四……三……
俺は明るい室内にダッシュで飛び込む。その背後から銃声が響く。トルリアーニの悲鳴が上がらないから天井に向けて撃っているのだろう。ガラスや照明や陶器が割れる音が続き、俺は扉の対面の壁にぶつかった後、ブラスターを構えたが、トルリアーニの姿はない。すぐに動く向きを変えソファに手をかけ横っ飛びする。果たしてそこには中年太りしたトルリアーニが銃を両手で握りしめたまま体を丸めてうずくまっていた。俺はその両手首を思いっきり左手で握りしめ床に押し付けると、ブラスターの安全装置をオンにし右手でもぎ取り、部屋の隅に向かって投げた。そのタイミングでバグダッシュがソファに飛び込んできて、無傷でトルリアーニを抑え込む俺を見ると、ブラスターを下ろし大きく溜息をついた。
◆
「士官学校首席卒業者っていうのはみんな大尉みたいなんですかね」
小さくヒッヒッと
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