第46話 隣地の草刈り
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現場に直接刺激を与え、本来の任務を思い出してもらわねばならない。そうでないと彼らは今後、女王様の働きアリにすらなれない。
カッパー小隊長は歯ぎしりしたが、硬く握りしめられた拳を俺に向けることはなかった。彼が一歩退いたのを見て、胸ポケットにしまっていた逮捕状とパルッキ女史のサインが入った上位者告訴権証明書、それにバグダッシュから預かった星系首相のサイン入り民間人逮捕承諾書を全て提示する。これらは全て、『お前らが無能だから軍と憲兵隊に任せるんだぞ』と言っているに等しいもの。果たしてカッパー小隊長の顔は、最初は赤く、次に青く、そして白くなった。
果たして肩を落としたカッパー小隊長を先頭に、俺達は長官公室に向かう。狭い領域とはいえ治安の番人という立場の本拠地に、軍と憲兵隊の侵入を許す。よりにもよって公文書によって事態は法的に保障されて、なおかつ治安維持機構のトップが逮捕されるという。行き交う職員はみな、カッパー小隊長同様に意気消沈している。運が悪かったとは思うが、本来なら彼らも軍が海賊掃討に動いた段階で自ら行動すべきだったとも思う。
「ここです」
カッパー小隊長が指し示す先に長官室はある。ごく普通の執務室を思わせる木扉だ。勝手に開けて入れと言わんばかりのカッパー小隊長に、俺はあえて皮肉を込めて応えた。
「常軌を逸した長官が銃を構えて、我々が扉を開けたと同時に発砲の恐れがある。小隊長、悪いが部下の貴官が扉を開けてもらいたい」
俺のいい様にバグダッシュは右唇を吊り上げて笑うと、カッパー小隊長は心底ムカついたと言わんばかりの表情で扉を開けた次の瞬間、閃光と共にノブを持ったまま床に倒れた。即座に俺もバグダッシュも、勿論憲兵隊も床に腰を落としたり、壁を背に張り付いたりしたが、目の前で胸から血を流しながら声もなく口を開け閉めするカッパー小隊長から目を逸らせなかった。付いてきた憲兵隊のうち二人を割いて、小隊長を現場から下がらせると、俺は大きく溜息をついて、腰からブラスターを引き抜き、エネルギーカプセルを確認する。
「……ボロディン大尉は預言者かなにかですか?」
「皮肉ですか、バグダッシュ大尉」
「本気でそう思うようになりそうですよ。今回の任務でコレが一番のビックリです。で、どうします?」
「警告して降伏すれば良し。反応なければ突入します。憲兵隊、記録保持と援護射撃を」
そっと携帯端末をカメラモードにして室内を探る。内部にバリケードはない。恐らくはソファの背に隠れて扉に照準を合わせて狙い撃ちというところだろう。撃たれて死ぬ可能性はあるが、初撃を躱し切れば後は憲兵隊が突入して数の暴力で押し込める。とそこまで考えたところで、自分がナチュラルに人を殺そうと動いたことに気が付いた。
前世ではしがないサラリーマンだった。実銃を撃つの
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