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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第45話 マーロヴィアの後始末
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セン中佐が敬礼をして司令官公室から出ていくと、ビュコック爺様の顔付きは部下の苦労をねぎらう好々爺のそれから、老練で冷厳な辺境管区司令官へと変貌した。

「さて、ジュニア。わかっておるじゃろうが、貴官の仕事はここからが本番じゃ」

 俺達が偽装海賊で暴れまわっていた頃、爺様たちは根拠地メスラム星系にあって小惑星帯に潜む宇宙海賊を蒸し焼きにし、慎重に情報操作して護衛船団計画を練り、動かせる数が著しく少なくなった艦艇でどうにかこうにか星域内のパトロールを必要最小限とはいえ実施していたわけで、その労苦は偽装海賊作戦を半年以上実施していた俺達と何ら遜色ない。爺様の横に立つファイフェルなど今にも死にそうな青白い顔をしている。

 だが爺様の言う通り、本当の仕事はこれからだ。

 偽装海賊を使っての討伐作戦と機雷とゼッフル粒子を使っての蒸し焼き作戦で、マーロヴィア星域内の海賊組織は認知されている組織の大半を撃破ないし投降させた。だがそれは全てではない。逃げ出した生き残りはしばらくすれば戻ってくるだろうし、星域外からの流入もあるだろう。駆除作業はこれからも続く。

 同時に捕虜となった海賊に対する民事更生プログラムを着実に実行しなくてはならない。作戦の承認により、軍中央の支援は一応確約されてはいるが、『海賊捕虜収容所』としてメスラムを発足させる上で、その原資を全て軍が負担するのは些か虫が良すぎるし、現実的ではない。その為にマーロヴィア星域行政府経済産業庁の協力は取り付けたが、絶対的な資本力不足から中央政府の協力も必須となる。パルッキ女史だけで中央政府を説得できない場合は、当然作戦立案者が説明に行かねばならない。つまり俺だ。

「バーソンズがとっ捕まったことで、首都の防衛部連中はさぞ枕を高くしておることじゃろうて……いずれジュニアには一度ハイネセンに行って、その後頭部を蹴り上げてもらわねばならんじゃろうな」
「覚悟はしております。レンタルしているバグダッシュ大尉とコクラン大尉を返却する前に、星域管区の管理システムも固めねばなりませんし」
「まぁ交代メンバーにはあまり期待しておらんから、そちらは儂とモンシャルマンで進めておくとしよう。ジュニアには行政府側との折衝に当たってもらおうかの」
「民生分野に関しては行政府経済産業長官のパルッキ女史が指揮官であると思いますが」
「儂の主義には反するが、憲兵隊の二個小隊を貴官とバグダッシュに付ける。孤立無援のお姫様を救いに行くのは王子様の仕事じゃろう」
「地上での警察権はあくまで治安警察……ですが」
「どこをどうめぐったのかは知らんが、ハイネセンの中央法務局から統合作戦本部防衛部を経由して儂宛に怪しげな書類が届いての。今はバグダッシュに預けておる」

 それは元警察官僚の国防委員様から届いた『印籠』だ
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