暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第42話 ブラックバート その1
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ると、俺はカールセン中佐に言った。中佐が以前乗っていた駆逐艦の名前を使っている『ブラックバート』である以上、カールセン中佐の顔は知られている可能性が高い。
「カールセン中佐、ここは自分にまかせていただけませんか?」
「よかろう」
 頷いてカールセン中佐がカメラに映らないよう戦闘艦橋の右端に移動する。それを確認してから俺は受信画面に正対した。画面には模範的同盟軍人ともいうべき少佐の階級章を付けた中年の男性が映っている。俺が敬礼すると、相手も答礼するがそれもそこそこに詰問口調で問うてきた。

「貴官がそちらの巡航艦の艦長か? 官姓名を申告せよ。」
「申し訳ありません、少佐。小官はビクトル=ボルノー大尉と申します。巡航艦『ニールスV』の副長代行を務めております」
「何故、識別信号を出さない。辺境の、それも星域管区境界において識別信号を出さないとなれば、海賊と誤認される可能性すらある。軍機違反であり、不用意に部下を危険にさらす危険な行為である。正当な理由はあるのか?」
「はい。先日、当艦は恒星アブレシオンからの強力な太陽風と磁気嵐を受け、航行機関部と長距離通信アンテナに重大な電子的損傷を受けております。幸い搭載艇の緊急通信回路により近隣哨戒中の僚艦に救援を要請しており、当艦は現宙域において待機中であります」
「……そうか、それは災難だったな」

 正規軍に対して軍規と組織論の両面からこうも堂々と演技ができるというというのは、この少佐もかつて軍での、それもこういう経験が豊富な退役者ということだ。だが救援要請という言葉に、この少佐は一瞬言葉を詰まらせた。

「僚艦の到着はいつ頃になると連絡があったか?」
「一二時間後とのことでした。ご存知の通り、マーロヴィア星域管区は配備艦が少ないので、時間通り到着するかはわかりません。難儀しそうです」
「艦長はどうなされた。不在のようだが?」
「艦長は機関に明るく、機関中心部で陣頭指揮をなさっておいでです。航海長は各部航法装置の再点検の為、現在艦橋を不在にしております」

 わざとらしく心細い演技でそう答えると、画面の少佐は顎に手を当てると、しばらく沈黙していた。だがその手に半分隠された細い唇が、小さく笑みを浮かべているのは間違いなかった。

「もしよければ、当艦から応急班を送ることが可能だが、どうか?」
「お申し出、感謝いたします。少佐。ですがそちらの船団のスケジュールのほうは、いかがなのでしょうか? ただでさえ少ない護衛戦力が半分になってしまっては……」
「それは問題ない。実は船団後方よりマーロヴィア星域管区に新たに配備される戦艦が一隻と巡航艦が二隻続航している。あと五時間もすれば合流できる。もし修理が長引くようなら船団の護衛は巡航艦が担当してくれる。当艦の応急班で修理不能であるなら、戦
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ