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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第42話 ブラックバート その1
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「それだけの艦艇数なら、複数の集団に分かれて侵入するんじゃないのか?」
「否定できませんが、偽ブラックバートがバナボラ・グループの海賊船団を撃破したことを知っているとなれば、各個撃破の危険性を考え戦力の一斉投入を図る、というのが元軍人の思考ではないでしょうか」
「しかし、一団となって侵入してくるというのもまた、考えにくい話だが」
「現在、マーロヴィア星域管区への航路運行において、船団方式をとるよう隣接星域管区へ指示が出ています。ガンダルヴァ星域管区で、商船改造型の武装艦を囮とし、旧式とはいえ制式の軍艦を使って海賊行動を行ったことから、彼らはその方式で偽ブラックバートを釣りだそう、と考えていると思われます。問題は……」
「何隻の軍艦がいるかということだな」

 カールセン中佐が、目を閉じたまま答えてくれた。

 標準巡航艦が二隻だけ、ということであれば彼らは全戦力で護衛船団を偽装するだろう。一〇隻前後の輸送船を護衛するのに二隻の巡航艦が付く、というのは小規模船団としては極めて常識的な編成だからだ。だが他にも軍艦がいた場合……特に旧式であっても戦艦がいた場合、戦力的に多様なシナリオを創ることができる。

 こちらにとって有利な点は、ブラックバートが護衛船団を偽装したとしても、それが本物ではないということが分かるということ。個艦性能においては相手よりも整備運用面で優勢であること。そして特務分隊の総数をブラックバートが完全には把握していないということ。

「まずはトリプラ星域側から出発する護衛船団のスケジュールを完全に把握しましょう。そのどれかの便に偽装して、侵入を果たす可能性が極めて高いと思われます」

 次にそれを迎え撃つ作戦。ブラックバートには最低二隻の標準巡航艦がいる。これを分隊全艦で撃破し、残りの武装艦は各個に撃破する。もし戦艦が同行していた場合は、最優先で集中砲火を浴びせる。だがブラックバートの偽装した護衛船団に五隻の巡航艦が集団で接近すれば、当然彼らも警戒するだろう。それであるならば、「パトロール中の巡航艦一隻が船団に遭遇した」というシナリオで動いたほうが自然だ。

 ほかにも多様なシナリオが考えられるが、それはアブレシオン星系に到着するまでの間にウエスカの戦術コンピューターに放り込んでおけばいい。ここまで話し、俺は集まっていた艦長達にアブレシオン星系への進路変更と、各種兵装の整備と塗装の変更を指示して会議を解散させた。部屋を出てシャトルへと向かう艦長達をよそに、カールセン中佐だけは椅子に座りなおしていた。俺は余計なこととは思いつつも、机上の資料をまとめる手を止めた。

「中佐、いろいろ思うところはあろうかとは存じますが……」
「……あぁ、わかっているとも」

 小さく手を上げてそう応えるカールセン中佐の顔に、
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