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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第40話 訓練
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宙域の情報にレベル差をつけて漏洩させた。
当然、海賊同士での情報交換は頻繁だから、それを突き合わせて状況照合を行うだろう。それを見越して、弱小海賊の幾つかを減刑処分を餌に降伏させた。驚いた他の海賊組織は慌てて組織の引き締めを図る。そこでバグダッシュが意図的に流し込んだ偽の作戦情報に粗があることに気が付き、幾つかの情報屋が海賊自身の手によって潰された。
 海賊組織は自身の安全を守るため、比較的親交のあるいくつかの集団に纏まることを余儀なくされた。異なる集団同士の間では緊張感が高まっており、後は火をつけるだけの状況になっている。

 文章にすれば簡単に見えるが、現実にハリネズミのようにアンテナを張り巡らしている海賊と簡単に接触し、まるでゲームをするかのように相手を操ってしまう手腕はとてもマネできない。星域開拓以来、宇宙海賊に悩まされ常に主導権を奪われていたマーロヴィアが、たった一人の情報将校によって手玉に取られようとしている。

「つまりマーロヴィアはバグダッシュ一人を派遣するほどの価値もない、ということなのか?」
 俺は嚮導巡航艦ウエスカにある自分の個室で、バグダッシュの報告書を片手に溜息をつかざるを得なかった。

 自由惑星同盟が国家として成立し、ダゴン星域会戦で帝国と接触するまでの間、多くの星域と星系がその支配下に入った。産めよ増やせよ拡大せよで領域を拡大したものの、まずは初期投資人口の不足で、ついで資本の選択集中で、そして帝国との戦争で、みるみるうちにその価値を低下していったのだろう。
 メスラム星系に分不相応ともいえる巨大な星域軍管区司令部があるのも、いずれはここを根拠地にさらなる支配領域拡大を、と臨んだのだろう。が、一五〇年にわたる長い戦争が辺境への投資意欲を低下させた。それが海賊の目に留まりカビのように星域を蝕んでいった。

 ビュコック爺さんをこのド辺境に送り込んだのも、統合作戦本部が准将の定年までの四年間で成果を上げてくれれば儲けものぐらいの考えだったのかもしれない。原作の初登場時点でビュコックは中将として第五艦隊司令官まで昇進しているわけだから、このマーロヴィアでもそれなりに実績を上げたに違いない。そこで、俺は背筋が寒くなった。

 はたして俺は転生してこれまで、なにか状況を変化させているのだろうか?

 原作に登場しないキャラとしてこの世界に生を受け、士官学校では多くの原作キャラと出会い、多少なりとも運命を変更させたのだろうか? 自由惑星同盟の引きこもり防衛など果たせることなく、結局は原作通り天才ラインハルト=フォン=ローエングラムによって蹂躙させられてしまうだけなのではないか。大きな歴史のうねりの中で、凡夫一人ができることなどたかが知れている……

 バグダッシュの報告書と共に、マーロヴィア星域メスラム
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