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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第40話 訓練
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と堅気な会社自体が存在しない。大なり小なり海賊とつながりはあるから、取り潰しにかかる補償額など第一艦隊を動員・常駐する額に比べればまだましだ。それに行政府直轄あるいは半官半民となった鉱山会社に『新しい労働力』が軍から提供され、その製品は優先的に軍が買い取ることになる。そして幸いに爆発することのなかった機雷を処理するにも人手は必要。その為に事前実施される更地作業が若干過激であることは否定しない。

 つまりロバート=バーソンズが海賊行為で資本を作り、ケリム星域で実施していた活動を、行政が直轄して行うという事だ。パクリも甚だしいが、今度は非合法ではない。しかし実施するためにはブラックバートという義賊の存在は完全に抹殺されなければならない。自らの不作為を忘却させ、行動を正当化し、彼らのやってきたことを否定すること為に必要な儀式なのだ。

 そしてケリム星域で敗退・逃亡したブラックバートは数を減らしているとはいえ、恐らくは元准将の指揮下でも最精鋭で構成されているであろう。海賊を偽装した上で、彼らに勝つ為には部隊にそれなりの練度が必要になる。

「バーソンズ元准将をこの星域に引きずり出す為には、大きな餌とともに、彼の軍内外に残る名声を必要以上に貶める必要があります。その実働戦力として我々が行動するのです。そして、汚名をそそぐために出てきた彼を葬るだけの力を我々は持たなくてはならない」

 そこまで言ってから俺はカールセン中佐に視線を向けた。すでに彼の眼は深紅に染まり、俺を絞殺せんばかりに睨みつけてはいるが、その瞳の奥に僅かな恐怖が見え隠れしている。軍内で自分を育てた恩人を自分が撃つという恐怖と、純粋に歴戦の用兵巧者と戦うという恐怖。ゲリラ戦を得意とする元准将に、今の戦力・練度では到底勝ち目はないとわかっている目だ。

「……ここで偽物のブラックバートが暴れていると、元准将が耳にするまでにはそれなりの時間が必要でしょう。一ヶ月から二ヶ月は余裕があります。補給は軍の輸送船団から略奪できます。一個巡航艦分隊がフォーメーション訓練する準備は整っております」

 俺の断言に、カールセン中佐をはじめとした五人の艦長はみな沈黙で応えた。出てもいない汗を拭き、腕をきつく組み、額に手を当て、首元のスカーフを緩める。数分ののち最初に口を開いたのは、やはりカールセン中佐だった。

「それで我々が……あの方に勝てると、貴官は言うのか?」
「あの方ではなく、バーソンズ元准将です、カールセン中佐」
 本人を直接知らない強みで、俺は笑顔を浮かべて中佐に応じた。
「勝てる勝てないの問題ではなく、勝たなくてはいけない、です。まず勝たなくてはあらゆる意味で我々は生き残れないことをご理解ください」

 その会話以降、カールセン中佐ら艦長達の態度は大きな変化を見せた。俺
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