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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第40話 訓練
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理由の最大のものは、偽物のブラックバートが現れる……つまり我々が彼の名前を騙って軍の護衛船団を襲うからです」

「バーソンズ閣下を倒す事が、どうしてこのマーロヴィア星域管区を活性化することにつながるのか。儂には理解できん。ボロディン大尉、説明してもらいたい」

 カールセン中佐は大きく首を振って大きな声で俺を問い詰める。納得できない説明であれば、色々な意味で容赦するつもりはないのだろう。作戦への不服従か、最悪艦ごと逃亡しようかという勢いだ。

 だがカールセン中佐がそうなるのも無理はない。徴兵され、専科学校そして幹部候補学校に推薦入学し、卒業後数年で駆逐艦の艦長となった時の上官がロバート=バーソンズ大佐(当時)なのだ。確実な戦果だけでも帝国軍の戦艦一隻を大破、巡航艦三隻に駆逐艦六隻を撃沈という大武勲を持つ中佐が、マーロヴィア星域管区の巡航艦先任艦長などをしている最大の理由は兵卒上りだから、ではない。ロバート=バーソンズの有能な部下だったという経歴が重なっているからなのだ。

 潜在的なシンパと見られ、それでいて操艦も戦闘指揮にも優れている故に艦長の職から外すことも躊躇われ、士官学校出身者でないこともあって辺境に流された。制式艦隊に所属させればその情報をブラックバートに流しかねない。海賊に身をやつすにしてもどこか遠くで、中央航路よりはるかに遠いところでやってほしい……そういう軍内部のエゴや保身から、中佐はマーロヴィア星域管区に配属されたわけだ。

 経歴をモンシャルマン大佐より付託された参謀長権限を使って読んで、俺は納得できたし中佐のエリート嫌いの根っこがとんでもないところにあって驚いたものだった。それを承知の上でブラックバートを名乗り偽装海賊作戦を組み立て、実働部隊の先任艦長に中佐を選んだ俺は、もう悪魔に魂を売ったも同然だ。

「バーソンズ元准将は宇宙海賊の中でも特異な人物です。リヴェット少佐の仰るように、並々ならぬ統率力を持ち、いまだに多くのシンパを軍内外に抱えていると思われます」

 シンパという言葉に、机の上で握られたカールセン中佐の両拳に力が込められたが、無視して俺は続けた。
「彼は海賊行為を行う目的は私腹を肥やすことではありません。それは十分承知しています。だからといって彼の海賊行為を許すわけにはいかないのです。カールセン中佐ならお分かりいただけると思います」
「……あぁ」
「彼の希望を、いささか形を変えた上で達成できる条件がこの星域……具体的にはメスラム星系に整っています。必要とされる資本はブラックバート以外の海賊組織を掃討することで得られる形になります」

 宇宙海賊の巣食う小惑星帯には機雷とゼッフル粒子による重層的な空間封鎖が実施される。堅気の鉱山会社には一時的な損失が出るが、このマーロヴィア星域にもとも
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