第40話 訓練
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
准将に率いられた恐るべき海賊集団の撃滅が、この特務分隊に課された最大の任務であります」
◆
「……“あの方”を叩くというのか」
嚮導巡航艦ウエスカの会議室の沈黙を最初に破ったのは、やはりカールセン中佐だった。
「ブラックバートは一昨年、ケリム星域管区で第一艦隊に撃破されたはずではないか?」
次に俺に聞いてきたのは巡航艦ミゲー三四号艦長のカール=ブルゼン少佐。幼少時に帝国から亡命してきた人物で、二等兵の頃からの経験に裏打ちされた操艦の腕とセンスは、マーロヴィア星域管区でも随一と評判の人物だ。
「仮に逃亡したとしてもケリム星域からわざわざマーロヴィア星域まで逃亡するだろうか? 経済的なことを考えれば商船の運航量の多いフェザーン方面へ行くのが普通ではないか?」
これは巡航艦サルード一一五号艦長のマルソー少佐。後方勤務から実戦部隊に移籍した変わり種だが、海賊を単艦で長時間追跡し撃破するといった辛抱強い指揮ができる人で、五人の中では俺に対するわだかまりが最も少ないように見える。
「大体、ブラックバートがこの近辺で発見されたのなら、他管区の部隊が黙ってねぇだろう」
呆れ顔で両手を天井に振り上げたのが巡航艦ミゲー七七号艦長のゴートン少佐。『暴れ牛』の異名があるように勇猛果敢な艦の指揮をするらしいが、上官に何度か手を挙げたらしく譴責処分の数も多い。当然、俺に対しては反感しかもっていないように見える。
「……ブラックバートの統率力は尋常ではない。エル・ファシル星域管区に在籍していた時、私の所属していた駆逐艦分隊は彼らにいいように翻弄された」
腕を組んで苦虫を噛みながら答えるのが巡航艦ユルグ六号艦長のリヴェット少佐。この中では一番年長で、帝国軍との戦闘も海賊との戦闘も多くこなしてきた。戦闘数に比して撃破艦艇は少ないが、損害もほとんどない。
いずれの艦長もブラックバートという名前を無視できないのは一目瞭然だった。それだけに海賊ブラックバートの名は有効であると、俺は確信して、彼らの問いに一つ一つ答えた。
「まず本物のブラックバートは完全に撃破されたわけではありません。残念ながらケリム星域管区第七一警備艦隊の副官をしていた小官が、不本意ながら保証せざるを得ません」
経済的なことを考えたとしても、十分に武装した警備部隊がうろつくフェザーン航路で、根拠地を失い弱体化したブラックバートが襲撃を行うのはあまりにもリスクが高い。エル・ファシルやドーリアといった星域管区は現在帝国軍と接触している故に、民間船舶の運航は制限されているか十分な護衛がついている。そしてブラックバートは旧式・廃棄予定だったとはいえ同盟軍の戦闘艦を有している故に発見されても特別任務という事で誤魔化しがきく。そして
「彼らがマーロヴィア星域にくる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ