第39話 猛将の根源
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「輸送船への改修は順調に進んでいるようです」
ロフォーテン星域管区キベロン宙域にある訓練宙域に標的として集約していた船舶を無理やり輸送船に改装しようというアイデアで、あっという間にコクランは二〇〇隻近い『仮装輸送船』を確保してしまった。元々標的艦として無人操縦できるよう改装されていたわけで、後はカーゴスペースをもっともらしく取り付ければいい。その点、帝国軍が破損遺棄した輸送船は非常に重宝した。形が形なので、穴を防ぐだけで相当な量の物資を運搬可能だからだ。
「輸送船の回航及び偽装海賊艦への参加者の人選も済みました」
これは俺。モンシャルマン大佐によって粛軍された部隊の中から、二〇名前後の艦長を選び出してさらにそこから五名五隻に絞った『特務小戦隊』を選抜。残りの一五隻でローテーションを組み、キベロン宙域からマーロヴィア星域管区に隣接するライガール星域管区へ仮装輸送船を回航させることになる。もともと一度ないし二度使えればいいという前提だから、メスラム星系まで到着すれば、後は物資の移動や配置以外では燃料を抜いて軌道上で放置すればいい。
肝心の物資集積指揮は基本的にライガール星域管区マグ・トゥンド星系でコクラン大尉が行う。俺と特務小戦隊はライガール星域から出た後、ガンダルヴァ星域の無人星系に潜んで以降は行方をくらます。マーロヴィア星域管区防衛艦隊は、行政府の勧告通り民間船運航の護衛艦抽出の為、一部星系へのパトロール回数を大幅に減らす事になる。そしてパトロールの居なくなった星系には当然……
「鉱山会社への勧告文書はもう作成されたんでしたね」
「いまからパルッキ女史の鞭で尻を叩かれる鉱山会社の面々の顔が目に浮かびますなぁ」
特に海賊からリベートを貰っている関係者は、事態を把握した時には顔が青ざめている事だろう。だが命あるを感謝してもらわねばならない。目星は付いているから、復讐を企図するようならそれなりに対処するつもりだ。ご褒美と思うかどうかは個人の趣向。
「ところで、偽装海賊の名前。もう決めたんですか?」
何気ないバグダッシュの一言。コクラン大尉は興味本位に俺を見ているが、バグダッシュはもう感づいてはいるだろう。
「『ブラックバート』でいこうと思います」
「世の中、面白くていいですなぁ」
そう言うと、新年何度目か分からない乾杯を、バグダッシュはするのだった。
◆
それから数日かけて物資調達の順序および護衛戦隊の手順を再確認した上で、コクランと回航要員は護衛戦隊と共にライガール星域管区へと出発していく。また俺も『ブラックバート』となる臨時分隊指揮官や艦長達と顔を合わせ、細かく打ち合わせをすることになった。
「よもや自分が作戦とはいえ、自国内で海賊行動をする事になろうとは思っていなかったな……」
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