第38話 オーバースペック
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「その、ガンダルヴァではこれほどの物資を必要とする作戦とは聞いていなかったものですから……」
出てもいない汗を拭きながら、若作りではあるものの生真面目な役人顔のコクラン大尉は、俺にそう言った。
「国防委員会の了承印と統合作戦本部の了承印がありますので、各補給基地に連絡して物資を差し押さえることは可能です。ですが輸送する船舶及びマーロヴィア星域管区内における保管場所についてご考慮いただけたらと」
「無理は承知しています……というより、今回の作戦案の詳細をコクラン大尉はご存知なかったのですか?」
「ロックウェル少将閣下はただ星域管区の補給参謀の一時的な代行と治安維持作戦の手伝いをしてこいと言われただけで……」
それはトリューニヒトとロックウェルの間に、作戦に対する若干の温度差があるという事だろう。両者とも傍観者には違いないが、立場が微妙に異なるということ。もう一点は作戦案の機密に関して、今のところ維持されていると見ていいということ。コクラン大尉が海賊集団と繋がりがあるとは到底思えないので、俺は作戦の進行状況について軽く説明すると、大尉は腕を組んで「う〜ん」と唸った。
「よく、作戦案が通りましたね……と言うべきでしょうか。軍艦を海賊船に偽装させて軍の補給船団を襲撃したり、有人鉱山のある小惑星帯に機雷やゼッフル粒子発生装置を仕組んだり、交通障害にしかならない通信機搭載機雷を跳躍宙域近辺に設置したりとなんて、普通に無茶な話ですよ」
「責任は星域管区司令部と自分がとります。で、輸送船と工作艦の手配は可能ですか?」
「偽装海賊船は管区司令部から出していただくとしても……やはり少し時間を頂きたいです。工作艦はともかく、作戦の機密性から民間輸送船はチャーター出来ないうえ、長期に渡って予備の少ない軍用輸送艦を拘束するわけですから……いや待てそうか、あの船を使えば……」
渋かったコクラン大尉の顔に、児戯を思わせる色が含まれたのを、俺は見逃さなかった。
「コクラン大尉?」
「輸送船に関してですが……とりあえず物を包んで運べて、最低限の恒星間航行速度が出せれば『デザイン』や『型式』に関しては特に問わない、ですね?」
「ゼッフル粒子関連の資材を運ぶ船以外は」
「それなら心当たりがあります。もしかしたら作戦に若干の味付けができるかと思います」
「ウィスキーのミニボトルが必要ですか?」
「『タダで頂ける』のでしたら、頂きましょう」
コクラン大尉が笑顔で応えると、俺はフェザーンから持ってきた帝国産ウィスキーのミニボトルを一つ、コクラン大尉に手渡すのだった。
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