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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第38話 オーバースペック
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ともかく目の奥底に、光るものがあることを見逃すことはなかった。

「……数は力です。魚を捕らえる網の目は細かいほうがいいし、餌も多いほどいいでしょう」
「この作戦の実行責任者はビュコック准将閣下で、立案者はボロディン大尉です。私は情報戦の指揮代行と作戦へのアドバイスが今回の仕事ですからな」
 右唇がちょっとだけ動いたような気がしたが、俺はあえてスルーした。それが気に障ったのかどうかはわからないが、もう一度スキットルを呷ると今度ははっきりと呟いた。
「公然と酒を飲んでもいい職場というのは、そうそうないものですからな。ちょっと腰を据えても悪くないでしょう。小官もできる限りご協力いたしますよ」

 爺様とバグダッシュの顔合わせはものの数分で済んだ。それは特に感動を呼ぶものでもなければ、冷たいものでもなかった。正式な情報参謀ではないにしても情報将校として時間の許す限り早く到着した相手に皮肉をぶつけるほど爺様は皮肉屋ではないし、バグダッシュも年配の上官相手に全く不可のない応対に終始していたので、まさに『ザ・形式』というような感じであった。それでも海賊掃討計画において、特に後方支援が重要となるというところに話が及ぶと、流石に爺様の顔も険しくなったようだった。

 その風向きが変わってきたのは、もう一人の助っ人がマーロヴィア星域に派遣されてきてからであった。

 宇宙歴七八七年一一月二九日。爺様と二人で無駄にデカい管区司令庁舎内の、照明の八割が消えてもなおまだ床を照らすスペースに余りある食堂で昼飯を食べている時。司令室でモンシャルマン大佐と留守番をしていたはずのファイフェルが、血相を変えて飛び込んできたのだ。

「どうしたのかね? ジュニアの大切にしているウィスキーのミニボトルでも盗み飲みしまったのかの?」
「い、いえ。そうではなく」
「それともバグダッシュ大尉の大切なワイングラスを割ってしまったか?」
「ち、ちがいます」
「なら慌てんでいい。落ち着いて報告せんか」

 爺様があきれた表情でろくでもないことを言いながらも、ファイフェルが差し出した通信文の印字紙を、曲った人差し指がある右手で受け取ると、斜め読みした後で俺に差し出した。俺もその通信文を読んで、爺様と全く同じように小さく感嘆した。ようやくマーロヴィア星域管区に代理ではあるが、ガンダルヴァ星域管区から補給責任者が赴任するらしい。

「後方勤務本部からロックウェル少将への押し付けが上手くいったようじゃな」
「赴任してくるのはオーブリー=コクラン大尉……ですか」
「前任が補給基地の需品課長となると、『縁の下の力持ち』と言ったところじゃろうな。補給基地すらない我がマーロヴィア星域管区には少し勿体ない気もするが、管区内にある補給基地とはいえ直接の麾下ではないからロックウェル少
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