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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第38話 オーバースペック
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ーンコップ相手に、ヤンを餌にして腹芸をこなせるような精神性の持ち主なのだから、ヘマして辺境に流された高級士官の息子なぞ歯牙にもかけない存在であろうけど。

 そんなバグダッシュは無人タクシーに乗り込んでからというもの、ずっと自分の端末をタッチペンで操っている。時折フフンと鼻で笑うような仕草を見せていたのでそっと横目でカンニングしてみると、風俗関係のホームページを検索していた。一瞬何考えてるんだコイツと思ったが、風俗関係でも開いているページはある特定の分野に絞られていた……つまり『盗撮・盗聴』分野に。情けないことだが俺は星域管区司令部に到着するまで、一切口を開く事が出来なかった。

「まぁ、素人さんなりには合格ですな」
 黙ったまま司令部にある俺の個室に入ってバグダッシュは、俺に断るまでもなくパイプ椅子を二つとり、一つに腰掛け、もう一つに長い左足を放り出して言い放った。
「個室防諜も一応できているし、大尉の端末に侵入するのにはちょっと骨が折れました。この辺の海賊の情報屋程度を相手にするなら、まずは十分防御できるレベルです」
「……自分の端末に侵入、ですか?」
「暗証を彼女の誕生日と愛称にするというのは、いささか男として未練がましいとは思いますがねぇ」

 腰にある自分の携帯端末に手を当て絶句する俺にかまうことなく、バグダッシュは自分のカバンからもう一つの端末(当然民生品のオリジナル)を取り出して三次元投影機に接続すると、部屋の照明を消すよう天井を指差す。俺が照明を落とすと、ここ数週間見続けたマーロヴィア星域全域の航宙画像が立体図で現れた。

「ボロディン大尉の作戦案は長い長い航海の間に読ませてもらいましたよ。飴と鞭を使って小さい海賊を磨り潰しながら、偽装海賊による襲撃によって意図的に海賊集団を幾つかの大集団へと集約させ、対立を煽りつつ、小惑星帯ごと封じ込めて討伐するというのは、実に偽善的で悪魔的で非人道的な作戦ですなぁ」
「それって褒められていると思っていいんですかね?」
「絶賛したつもりですよ? ここに旨いワインがあればより感動的に手放しで賞賛するんですが」
 そういいながらバグダッシュは俺に断りもなくジャケットから鈍い輝きを放つスキットルを取り出して一口呷った。
「だが残念なことに手足が足りないから状況終了まで三年なんて時間をかけることになるんです。小官も大いに手伝いますし、どうせ海賊共は『まとめて蒸し焼き』にするんですから、ここまで時間をかけて実行する必要はないんじゃないですかねぇ」

 バグダッシュの口調は軽薄そのもので、聞いている俺ですら軽い『アドバイス』かと思えるようなものだ。だが時間をかけることこそ今回の目的の一つであり、その目的が何であるかについて、俺は爺様にもすべては説明していない。だがバグダッシュの、顔は
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